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此処は幻獣が次々と生まれる世界アグレイヤ。
幻獣の始祖は強大な力を持ち、始祖の名はそのままその幻獣種を指し示すようになる。
幻獣種ガーヤは調整と循環を司る、大地に属するモノ。
ユクレナ山に誕生して以来、その属性を活かし、周り全てに恩恵をもたらす。
故に尊ばれ、ありとあらゆる種から共生することを望まれてきた。
そういった成り立ちからは、天敵も現れない。
ガーヤは周りの種と共に穏やかに繁栄し続ける。
そして、ユクレナ山はだんだんと驚くほど多様性に満ちた、豊かな山へと変貌していった。
そんな満ち足りた環境の中、生まれて間もない幻獣種ガーヤの子は、のどかに大樹の下でまどろんでいた。
この山でガーヤに害をなすモノはいない。
無防備に姿をさらしたまま、まどろみを楽しんでいたガーヤの子は、いきなりムギュッと身体をつかまれ、心底驚き飛び起きた。
ガーヤの子の真ん丸に見開かれた黒眼と幼い少女ルナの眼が合う。
「くろいおめめ、……げんじゅう?」
黒眼は幻獣の証である。
舌っ足らずな幼い声でルナは問うと、ガーヤの子が答える間もなく、ガーヤの子を抱え込んで走り出した。
「とーしゃまー! りゅな、おともだちをみちゅけまちたー!」
ルナの父は幼い娘が抱えてきたモノを見て、仰天した。
「ル、ルナ、コレは……いや、この方をどうしたのだ?!」
「りゅな、とーしゃまにちょうかいしゅるの」
そういえば、黒眼の幻獣を友とし、各地を旅する者の絵本を読み聞かせたばかりだったー! と父は思い出す。
ニコニコするルナにアワアワする父を含む一行。
ルナの腕の中で、ひたすら半眼で何とかしろ〜と訴える幻獣ガーヤの子。
混沌とした場は、ルナのコフッと咳き込む音で変わった。
そのまま身をふたつに折り曲げながらも、激しく咳き込むルナを見て、ルナの父の顔色も変わる。
「ルナ!!」
慌てて駆け寄るも、彼はルナの苦痛を和らげる術を持たない。
「療者を――! 早く療者をここに!」
「ハッ」
「長! かの者は今、薬草採取へ出かけており――」
「何だと?! 何の為の高額依頼だ! 娘の治療が第一優先だとあれほど念を押しておったのに――!」
ルナの咳き込みはさらに激しくなり、もはや立っては居られず、ついにはその場に座りこんでしまった。
明らかな異常事態。
しかし、この緊迫する場において、ルナに何かしてやれる者はいない。
いや、一つ希望があるとしたならば――――
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