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どうして、何故俺に双子であったと告げなかったのだ、サラ?!
館へと疾走する馬を駆りながら、パウロは歯を食いしばった。
出産に危険はつきものだが、双子ともなれば、その危険度はさらに跳ね上がる。
山岳地帯を治める一族で双子を無事出産した者など、過去を振り返ってみても数える程しかいない。
ルナに付添い、隣国へ旅立つ寸前に判明したサラの妊娠。
急きょサラと役割りを代わり、領主代理を父母に任せての旅立ちだった。
双子であると知っていたならば、サラの側を離れなかった――?
いや、そうなれば、ルナはどうする……。
もっと早く帰れば、良かった?
それでも、それならば、ルナのあの縁は結ばれまい。
ああ、どうすれば良かったのか――――?!
恐らく、自分がこう苦悩することを予測した上での、サラの隠し事であろうことは分かった。
パウロの目に涙が浮かぶ。
早く、一刻も早く妻のところへ。
パウロが率いる精鋭部隊が駆けていく。
療者イシュ=レトカの、隣国5本の指に入る療術の腕前という看板は、伊達ではなかった。
息も絶え絶えに館へとたどり着いたイシュだったが、患者であるサラと対面した途端に顔つきが変わる。
テキパキと周りに指示を出し、懸命にサラへ施術を繰り返す。
イシュは何とかしてねじれてしまった双子の位置を戻そうと、ありとあらゆる方法を試していた。
パウロ達が館へ到着してから、半日が経った。
それ以前からこの難産に耐えていた、サラの限界は近い。
サラの部屋の外で蹲り、祈りを捧げていたパウロのところへイシュがやって来た。
イシュの顔にも、疲労の色が濃く浮かび上がっている。
「……パウロ様。どうかご決断を。サラ様は、うわ言のように何度も何度も何があっても双児を優先させよ、と仰られます。もはや、ほとんど意識もないのに――何とか母体もと、手を尽くしましたが、双児の位置が戻りませぬ」
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