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「いくぞっ!」
清七が紺の絣模様に飛びかかった。
が、軽くいなされて地面に転がった。
文次郎と権造も二人が懸かりで白黒の着物の方へ襲い掛かる。
青年は身体をのけぞらせて二人を受け止めたが、次の瞬間、身体を素早く捻ると権造が前のめりになり、地面に転がった。それでも文次郎はしがみついていたが、響くほどの音を立てて頬を殴られると、膝から崩れ落ちた。
佐太郎は足が動かない。バタバタと足踏みするような素振りを繰り返し、何もできないでいる。
そのうち、ずんぐりした方が火打ち箱を取り出し、導き縄に火を入れた。今度は風に邪魔されることもなく、導き縄に小さな炎が立った。六尺先には火薬の詰まった巾着袋が待っている。
「火を消せ!」
清七は導き縄に飛びつこうと走った。
「そうはさせねえぜ」
白黒の縞模様が体当たりするようにして、清七の行く手を遮った。清七はまた転がった。
「俺達の火薬だ。好きなようにさせてもらうぜ。けっ!」
文次郎も導き縄を消しに走ったが、やはり紺絣に着物をつかまれて投げ飛ばされた。
二人は導き縄の炎を守るように立ちふさがる。
こいつら火薬の爆発力を知らねえんだ…
炎が火薬に向って走る。
清七は起き上がった。導き縄は残り四尺になっている。風がほど良い具合に炎を刺激しているので炎はみるみる進んでいく。
清七は白黒の着物に、文次郎と権造は紺絣に行く手を阻まれている。
佐太郎は動きが鈍いことを見透かされており、相手にされていない。
「どうした。もう終わりか? はやく逃げねえとそろそろ爆発するぜ。ひひひ…」
紺絣が下衆な笑い声をあげながら、清七たちを見下ろした。
「あんた達こそ身体が粉々に砕けるぞ」
清七が忠告する。
「せっかく手に入れたものだ。一度は爆発させてみなくちゃな」
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