瞳に咲く花

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 この距離で爆風を受ければ皆、命はない。青年らはたじろぐ様子を見せない。やはり火薬の爆発力を知らないのだ。  導き縄の先端は確実に火薬へと進んでいく。 「さあ、早く逃げねえとそろそろ爆発するぜ」  紺絣のその言葉に誰も動かない。逃げれば負けだ。逃げれば火薬は爆発して跡形もなくなる。 にらみ合いが続く。 小さな炎が風に揺れている。 導き縄は残り二尺。 清七の息が荒くなる。時が止まってほしい。 「あぶないよ。あぶないよ」  佐太郎がふやけた声を上げながら、足踏みを続けている。  残り一尺。  誰も動かない。 清七の喉奥が燃えるように熱くなった。  ちらりと文次郎を見ると、額に脂汗を浮かばせて、胸で呼吸をしている。 「あぶないよ、あぶないよ、もう逃げたほうがいいよ」  佐太郎の足のばたつきが速さを増している。  このままでは全員とも頭も身体も粉々にぶっ放されちまう… 「ぼくはいやだ!」  佐太郎が踵を返して走り出した。  そろそろ危ねえ。仕方ねえ、逃げるか…。  と、清七が思ったその時、  ターン!  鼓膜が張り裂けそうな乾いた破裂音が広がった。  全員が腰を抜かし、気を失ったように呆然となった。  そこに、一人の男が着物の裾を捲り上げて疾風のごとく駆けてきた。 「源右衛門兄さん!」  清七はそう声を上げたはずだが、破裂音が耳の中でうなっていて、自分でも何を言ったか分からない。  源右衛門が、残り三寸になった導き縄を巾着の口から引き抜いて、投げ捨てた。 「危ねえところだったぜ」  源右衛門が息を整えている。 「俺が来るのがあと二呼吸遅かったら、おめえら全員、身体が砕け散っていたぜ」
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