瞳に咲く花

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「清七の奴だって、今回のことで、この店には居にくいだろう。そいつを俺は…」 「だから、待ってくれやせんかと言ってるんです。清七がこの店に居にくかろうが、居やすかろうが、あいつはこの店の子どもでねえのでやすかい?」 「う、うむ…」  弥兵衛が言葉に詰まった隙に源右衛門はまくし立てるように言った。 「花火の打ち上げってのは俺たち家族ががっちりと絆を深めていなくちゃならねえって、そう口を酸っぱくしてたのは親父ではねえですか。清七を家から出すということは家の楔がひとつ外れるってことでやす。楔がひとつでも外れれば、家がばらばらになっちまうのではねえですかい?」 「そ、そのように大げさな…」 「いや、間違えなくそうなっちまいやすぜ。もし清七を家から出すなら、仕事で失敗すれば家を追い出されるって、子ども達に宣言するようなものですぜ」 「お前、妙に清七を庇うじゃねえか。訳でもあるのか」 源右衛門は橋の上で武家にとびかかっていった清七の姿を思った。 「その十兵衛の親分ってのが、清七のどこに目をつけたのか知りやせん。しかし、俺も清七には光るものを感じていやす」  弥兵衛が源右衛門を見据える。 病み上がりであり源右衛門の口調は静かだが、言葉の中に挑みかかるような凄みがある。 「俺は、花火師には三つのものが必要だと思っていやす。ひとつは一日中同じ作業をしていても辛抱強くやり通す根気。もうひとつは、打ち上げのときに花火に火を入れる度胸。最後のひとつは、職人仲間を心の底から信頼する肝っ玉。そのうちひとつでも欠けてはいけねえ」  弥兵衛は源右衛門の持論に耳を傾けたまま固まったようになった。 「あいつにはその三つ、全てがある」  源右衛門は静かだが、しっかりした声でそう言った。 「なるほど、根気に、度胸に、肝っ玉か…」
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