道端に落ちている雑誌は少年の知的好奇心を伸ばす最高の教科書な気がする

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道端に落ちている雑誌は少年の知的好奇心を伸ばす最高の教科書な気がする

 いつも通りにキッチンで料理をしていると、玄関の方から息子が、帰って来たこと合図である自転車の音がした。急いで、料理を中断し、息子を玄関で仁王立ちして待つことにした。 「ただいま〜」 「健司。これは何?」  息子が学校に行っている間に、部屋を掃除していると、本棚と壁の僅かな隙間に何かが挟まっていたので、拾いあげた。  それは明らかに成人雑誌だったので、買ったのか、それとも貰ったのかわからないが、息子を問い詰めることにした。 「何って?それは自己啓発本だよ。自分の心を良い方向にコントロールするためにね。」  息子はなぜか、落ち着いた口調で理解できないことを言い始めた。 「は?何言ってんの?表紙に女性の丸裸が写っているのに。中身はどうせ、そういったシーンばかりでしょ。」 「そうだよ。だからさ。」 「もう意味のわからないこと言ってないで、これ勉強の邪魔だから没収。」 「は??わかってないなー。そんなことしたら勉強する気がおきないんだけど。」 「こんなもの見てる暇があったら勉強しなさい。」 「いや。これがあるおかげで、勉強に真面目に取り組めるよ。しかも集中力が上がるんだ。成人雑誌が目の前にあることによって、まず誘惑物を可視化させる。つまり俺の脳が誘惑を受けている状況を作るってこと。けど僕は、そこで誘惑に負けずに、勉強に勤しむんだよ。誘惑に負けずに、勉強したという成功体験の゙積み重ねが自信をつけさせるんだ。あと誘惑に負けて成人雑誌を見てしまっても、生を実感できるでしょ。生を実感することによって、生きるためには、勉強しなくちゃってモチベーションの向上に繋がるし。だから成人雑誌はそこらへんの、とにかく行動しろって書かれている自己啓発本より、よっぽど良い教材だと思うけどね。」  つまり息子は成人雑紙があることによって頑張れているという事を堂々と主張している。 「あんたが言ってる事、全く理解できないけど、それで今度のテストは大丈夫なんでしょうね?」  息子はここ最近は、テストの結果が悪い。 「大丈夫だよ。これがあるからね。」 「あんた、そもそもこれどうやって手に入れたの?」 「塚本の高架橋下に落ちてた。」 「ほんと、変なもの拾ってくるわね。わかりました。今回は見逃します。けどテストの結果悪かったら許さないからね。」 「はいはい。」   とりあえず、息子を一旦、信じることにした。   今日はテストの結果がわかる日である。息子がいつもどおりの時間に帰宅してきた。  けどただいまと言う声もなく、玄関からそのまま自分の部屋に行ってしまった。
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