貴重なランチ代

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貴重なランチ代

 今朝、妻の多絵(たえ)と喧嘩した。  きっかけは物価高騰による、ランチ代の値上げをお願いしたことだった。 「はあ?! ランチ代を上げてくれって? 一日500円あげてんでしょーが!」  それではコンビニの弁当も買えない。せめてあと200円上げてくれ。そう言うと。 「だいたいさ、あんたのような一山いくらの人間は、値上げをお願いする前にやることあるでしょーが! お米はあるんだからおにぎり作っていけばいいじゃない!」  一山いくらの人間か⋯⋯。確かにオレの代わりはいくらでもいるよな。だけどオレだって、オレなりに頑張ってるんだ。 「今は投資の時代よ。家のローンも始まったばかりだし、固定資産税もあるわ。値上げ交渉する前に投資しろ。ランチ代突っ込めば値上げ交渉してきた200円だって簡単に稼げる。西山さんを見習いなさいよ。投資でウン千万も儲けたっていうじゃない」  投資なんてしたことのないオレが投資を始めて、年収を超える利益を出せるとは思えないが⋯⋯。妻の多絵は隣家の西山さんのことばかり自慢する。それこそおまえの手柄じゃないだろうに。西山はイケメンだ。彼が投資をする原資は億を超えていたらしい。対してオレの原資は500円✕22日の11000円。リスクを伴う投資で、この実弾の差はとてつもなく大きい。  だけど、一山いくらのオレが遊ぶ金を手に入れるには、何かに賭けないといけないのも事実。パチンコや競馬では確実性が薄い。もっと確実に稼げる手段はないだろうか⋯⋯。
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