結局おいくら?

1/1
前へ
/5ページ
次へ

結局おいくら?

 さらに多絵は書類の一部を指して怒る。 「仲介手数料19万8000円! もうこれだけで大赤字だし! 司法書士が絡んでくればその費用も自腹だって言ったよな! あんたは確かに一山当てたよ! だけど一山当てていくら借金するつもりよ!」  か、解約しなきゃ⋯⋯。  オレはすかさずサイトの運営会社に電話をかけた。  だが、オペレーターは淡々と言った。 「当社は、宅地建物取引業者ではありませんから、クーリングオフはできません。またお客様は万倍チケット購入により、購入に積極的であるとみなされることもクーリングオフできない理由になります。約款もお読みになったと思いますが、年払いは今後10年間のご契約です。こちらは年ごとの全額払いとなるため、該当年に関しましてはクーリングオフできません。途中解約につきましては、違約金が発生し、弊社は顧問弁護士を通して訴訟案件と致しますが、お客様はすでに司法書士と契約状態にありますので、これも積極的であるとみなされ、高額な弁護士費用を払ったとしても、勝訴は得られないかと。もちろん、訴訟なさるなら、お止めしませんが、このお電話によって違約金お支払いを受け入れていただければ、ご購入の山はお客様のものとして、こちらで便宜を図らせていただきます。ちなみに違約金は、年払いの三年分、39万円となります」  多絵が頭を抱えた。  オレは一山当てたはずなのに、絶望感でいっぱいだ。  いや、確かに一山は手元に残るんだろうが、それに伴う出費が尋常じゃない⋯⋯。  多絵が薬指から指輪を外した。 「離婚してください」  二人で積み上げてきた人生の山が、なだれを起こす。  一山当てた?  なんて無慈悲なラッキーだ。  後日オレは、多絵に対する慰謝料で、さらなる借金をした。  もうコンビニ弁当なんて、高くて食えないよ。  オレは手に入れた山にこもり、自給自足の生活を送ろうと腹を決めた⋯⋯。 (結局、一山いくら?)
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加