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「帰宅中に警官から職務質問された。狼の姿だからか、不審者と思われたらしく、住民から通報があったと言っていた。けれども、俺は何もしていないし、巡査部長がものわかりのいい人だったから、無事に帰してもらえたのだが、それでも結構時間を食った」
「そう……。ところで」
「何だ?」
「父さんが、僕に勉強して、将来、一流の大学に入って、ホワイト企業に就職しろ、と言っていたのは、そんなことに、外で狼に変身してしまわないようにするため?」
「そうだよ。お前は俺の血を引いている。だから、本物の満月を見ると狼に変身するはずだ。世の中、人狼の存在を信じている人間なんて、ほとんどいない。だから、狼に変身した姿を見られると、今日の俺みたいになる。だから、そうならないように、早く帰宅できる所に就職できるよう、しっかり勉強して、いい学校に入れ、と言っているんだ」
変身するはずだ、と言っているのは、僕が変身するところを見ていないからだろう。
実際、僕は変身したことがない。
もし、父さんが言っていることが、本当なら、満月を見れば、僕も変身してしまうだろう。
僕は絵や写真、画像でしか満月を見たことがない。本物のと言っていたから、実物を見ないと変身しないんだろう。
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