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勉強する理由
やっと解けた。
学校のテストで出される問題とは比べ物にならないほど難しい問題だった。解くのにニ十分くらいかかった。
こんなことで中学受験は大丈夫なのだろうか。不安になってしまう。
僕が中学受験する理由は、将来、ホワイト企業に就職するため。そのためには一流といわれている大学に入学しなければならない。さらに、その手段として、いい中高一貫校に入らなければならない。
勉強、勉強、勉強……
さすがに嫌になってくる。
けど、父さんは「最低でも偏差値六十は切るな。できれば七十以上を目指せ」と言う。
偏差値六十。
これ以上の人間がどれだけいるんだろうか。
偏差値について調べてみたことがある。
平均値で偏差値は五十。
データのばらつきを示す数値として、標準偏差というものがあり、平均値プラス標準偏差で偏差値は六十となり、さらにプラスすると七十になる。
データの分布が正規分布なら、偏差値六十以上は十六パーセント、七十以上は二・五パーセントとなる。
はっきり言って、少数派だ。こんな少数派に食い込めと、父さんは言っている。
いい成績が取れなかったら、どうなるのか。
「受験に失敗し、二流以下の学校に進学。就職活動が厳しくなり、ブラック企業に就職しかねない。つらい人生になる」ということを聞いている。
基本的に発信源は父さんだが、同じようなことを言う人は多いらしい。
たしかにそういう場合もあるかもしれない。
けど、偏差値六十に満たない人間の方が、圧倒的に多いはずだ。正規分布通りなら、八割を超える。
そんな人間の全てが、不幸な人生を送っているのか? 「違うだろ」と僕は言いたい。
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