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由美は、自分と同じ20代くらいに見えるその若い男の傍に片膝を立ててしゃがむと、顔を近付けて声を掛ける。
「大丈夫ですか?」
微かに、男の眉が動いた気がした。
由美は男の肩に手を置き、小さく揺すりながらもう一度声を掛ける。
「もしもし、大丈夫ですか?」
若い男はゆるゆると目を覚ました。
由美は、ほっと息をつくと男の服の袖をまくって脈を取った。問題ないようだった。
若い男は、由美に目を向けた。男の瞳は暗がりの中でもはっきりとわかる、海の様なブルーだった。
「これはこれは……助けて頂いたようで、お礼申し上げます」
いやに丁寧な言い方だな、と、由美は思ったが口には出さなかった。
男は顔つきも容姿も外国人なのになまりが一切なかった。目隠しして声だけを聴いていたらまず日本人だと思うだろう。それよりも、もっとおかしいのは男の服装だ。まるでアニメかゲームから抜け出してきた王子の様な格好だった。まさか本当に、異世界から来たという訳じゃないよな?
磁場の影響で? まさか。
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