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その夜――。
教会堂は寝静まっていた。
立ち番の一人が、トイレに行く為持ち場を離れた。
残った兵士は、今、と思った。
音を立てない様に部屋の戸を開ける。
中のキーズはベッドで安らかな寝息を立てていた。
この状況でぐっすり眠れる王子の肝も大したもんだと思うが、これも仕事だ。と、兵士は思った。弟王子によって出世と言う報酬が約束されていた。
兵士は、廊下から漏れる燭台の放つ微かな灯りを頼りに、キーズの眠るベッドへとそっと近づく。
手に持ったナイフで、キーズの首を掻き切ろうとしたその時。
兵士の首の後ろに全身を突きあげるよな鋭い痛みが走った。
兵士は、あまりの痛みに思わず悲鳴を漏らしたが、その声は直前にしっかりと口を封じた何者かの左手によって、潰された。
鋭い痛みは、鎧の隙間から、深く深く刺さっていく。
兵士には、何が起きたのか分からなかった。
誰が、何故、自分をこんな目に遭わせるのか。
何も分からずに、兵士は、死に落ちた。
命の抜けた身体を何者かが引き摺って部屋の外に運んでいく。
そっと戸が閉められた。
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