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「僕のこと、忘れないで」
いまにも泣き出しそうな声で、きみは言った。
不安の九割は、的中しないらしい。
でも、きみはエスパーだ。17歳のきみとの思い出を、声を、わたしは忘れていってしまうだろう。時の流れは、残酷なのだから。
きみはエスパーだ。
大事なことに、よく気がつく。
「もう、バカね」
だけどね、おかしいの。笑っちゃうの。
頭がいいくせに、どこか抜けているんだから。
わたしは忘れんぼさんで、時の流れは残酷で。
消え失せてしまうものはあるけれど。
ねえ、――だから、人は手をつなぐんだよ。
わたしの願いが、きみに届きますように。
きみの悲しみが、長い時を経て、優しくなりますように。
繊細なきみの手は、意外にもごつごつとしていて、あたたかい。
その事実に胸がきゅぅんっとして、苦しいくらいよ。
いまはまだ、教えてあげないんだから。
(おしまい)
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