天狗の山

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 指定された場所は駅近くのよくあるファミリーレストランだった。独り身になってから縁遠くなっていただけに、懐かしさすら感じられた。  先に着いていると連絡があったこともあり、店員の案内を断って店内を進んだ。 「ここです」  立ち上がって手を挙げる青年を見つけ、窓際の席へと向かった。 「遠いところからわざわざ、ありがとうございます」  青年が感じのいい表情で頭を下げた。私はテーブルに並んでいるピザや食べかけのハンバーグが気になりはしたが、「いえ、こちらこそ」と挨拶を返した。 「散らかってますが、どうぞ」  勧められるまま、私は向かいに腰を据えた。 「昼がまだだったもので、我慢出来ずに先に頂いてました。良かったらどうぞ」  取り皿を差し出されたが、「いや、結構」と辞退した。 「そうですか。美味しいんですけどね」  青年は少しガッカリした顔をする。今の子はみんなこういう感じなのだろうか。それともこの子が変わっているのだろうか。そんな疑問が脳裏を過ぎるも、私はそれを飲み込んだ。 「あ、ドリンクバーは二人分頼んであるんで」  ハンバーグを切り分ける青年に促され、私は面食らいつつも立ち上がる。以前は妻が何でもしてくれたこともあって、自分で注ぎいくことなどない。戸惑いながらも、何とかコーヒーを淹れて席に戻った。
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