第一章 再会、君の想い

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 足が進まなくなってしまった僕の後ろから、政光の声が響いてハッとした。 「昼川ー! ほら、約束通り連れてきたぞ」  大きく手を振り、僕を指差す仕草をすると、前方で話をしていた昼川がすぐに気が付いて、こちらに振り返った。驚いた表情をしつつ、ゆっくりこちらに向かってくる。 「ちょっと、政光くん! そんな大きな声で呼ばないで。恥ずかしい……」 「あ、わりぃ」  すぐ目の前まで来た昼川に肩を叩かれながら怒られる政光は、なんだか中学の時の教室でも見たことがあったような気がする。 「……久しぶり、夜野くん」 「あ、うん。久しぶり……」  耳元を赤くしてこちらに視線を向けた昼川は、やっぱりかわいいと思った。あの頃と全然、変わらない。 「来てくれて、ありがとう」 「いや、うん」 「俺、向こうの奴らに声かけてくるな」  気を利かせてくれたのか、政光が奥の男子グループのテーブルを指差して離れていった。 「中学卒業以来だから、もうだいぶ経つよね。大人になっちゃったね」 「……そうだな」  昼川の色白な素肌を引き立てる程よい自然なメイクに、栗色の髪が緩く巻かれて胸元に落ちる。ふんわりとしたワンピースを着ていて、大人だけど可愛らしさを残したままの立ち姿に、僕の胸はゆっくりと心音を響かせ始めた。 「あたしね、実は……中学の頃、夜野くんのこと好きだったんだ」 「……え」 「ほら、夜野くんって女子から人気あったし、あたしのことなんて眼中になかったと思うけど、それでも、あの頃よく話してくれたりして、嬉しかったなぁって。同窓会するって聞いた時に、思い出しちゃって。はっきり気持ち伝えたことなかったし、結婚する前に伝えときたいなぁって思って、今日呼んだんだよ。だから、来てくれて本当に嬉しい。ありがとう」  ぺこりと頭を下げたあとに、楽しそうに笑う彼女の姿を見るのが、ただ嬉しくて、僕まで微笑ましくなっていた。けれど、僕の動きは止まったままだ。 『結婚する前に伝えときたいなぁって思って』  待ってくれ。 「……結婚……?」 「うん。来月籍入れるの。実はね、まだ全然大きくないんだけど、お腹に赤ちゃんもいるの。だから、今日はソフトドリンクでしか乾杯出来ないけど、許してね」  ふふ、と幸せそうに自分のお腹をそっと撫でる昼川の姿は、僕の知らないオーラで包まれているように見えた。
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