14人が本棚に入れています
本棚に追加
昼川があの頃の想いを伝えてくれたのなら、僕だって、あの頃君が好きだったと、伝えても良いはずだ。
頭の中でそうは思っても、なかなか口が開かない。
「じゃあ、久しぶりのみんなとの再会、お互いに楽しもうね!」
またね、と小さく手を振って、昼川はさっきまで話していた女子グループの輪の中にゆっくり戻っていった。
「昼川なんだって?」
突っ立ったままでいた僕の横に、いつの間にか政光が来て、顔を覗き込んでくる。
「……ごめん、やっぱ帰るわ」
「え?……おい、佑衣斗⁉︎」
政光の静止も聞かずに会場を出て、受付を通り過ぎ、出入り口へ向かった。
途中で何度か僕のことに気がついて名前を呼んでくれる人が居たけれど、構わずに外へ飛び出した。
雪なんて、ここへ来るまでは一粒も降っていなかったじゃないか。
それなのに、自動ドアが開いて一歩踏み出して見上げた空に愕然とする。大粒のぼた雪が道路も歩道も真っ白に埋め尽くしていた。
だけど、そんなことは関係ない。一心不乱で、歩き出す。
僕は、ここへ何をしに来たんだ。
何を求めていたんだ。
昼川が、僕の孤独を救ってくれるとでも思ったのか。
勘違いも甚だしい。
「……っう……っうう……」
苦しい。胸が潰れてしまいそうに苦しい。
どうしたって、僕は孤独だ。
誰も寄り添ってなどくれない。もう、毎日同じことを繰り返すだけの、何の意味も成さないあの場所にだって、戻りたくない。
戻れるのなら、あの頃に戻りたい。人生で一番楽しかった、あの頃に。
昼川のことを好きでいた時間が、きっと今まで生きてきた中で一番楽しいと思えた時間だった。あの時想いを伝えていれば。こんなに苦しむことなんて無かったのかもしれない。
足元は水気を含んだ雪のせいで、真新しいブーツもびしょ濡れだ。まだ中までは浸透していないけれど、冷たさを感じて指が悴む。
ようやく立ち止まった瞬間、同時に頭に酷い痛みを感じた。飛んできた弓矢にでも撃ち抜かれたみたいに、衝撃が走る。立っていられなくなって、シャーベット状の雪の上に、膝から崩れ落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!