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「……っ……はぁっ、」
息が、上手く吸えない。
シャツの上から両手で胸元を掴み、必死に呼吸を整えようとするけれど、吸うことも吐き出すことも忘れてしまったように、上手く出来ない。思考もだんだんと遠のいてゆく。
冷たい感覚が徐々に体全体を侵食していって、麻痺してくる。
一向に起き上がれない自分の体に、最悪の事態を予測した。
このまま、死ぬのか?
ドクンッと心臓が足掻くように高鳴った。なんの楽しみもない、生きているのか死んでいるのかも分からない、そんな生活を送ってきていた。
けど、やっぱり死ぬのは怖い。嫌だ。
自分の口元から、諦めきれないもどかしさが乾いた笑いと共に漏れた。
本当は、僕だって伝えたかった。
「僕も君のことが好きだ」と。
それが出来たら、僕の人生も悪くなかったと、素直にこの苦しみを受け入れて終われたのかもしれないのに。
どのくらいの時間が過ぎただろうか。苦しさの果てに、目の前が、真っ暗闇になった。
『後悔してる?』
ああ、そうだな。後悔って言えばそうなるのかもしれない。
『もう一度、今度は行動を起こしてみたら良い』
もう一度? そんなことはもう出来ない。出来るわけがない。
朦朧とする思考の中で、声が聞こえてくる。
僕は、いったい誰と話しているんだ? 自問自答か? なんだか眠いな。もう、どうでもいい。僕の人生なんて、どうでもいい。
ヒタヒタと足音のようなものが近づいてくる。相変わらず体は動かないのに、心臓だけが恐怖を感じて早鐘を打つ。
息すらしているかも分からなかった呼吸が、ようやく出来る気がするけれど、あまりにも酸素が取り込めずに、意識は朦朧としたままだ。
近づいてきた足音は、倒れ込んでいる僕のすぐ目の前で止まった気がした。
『思いは、伝えなければ伝わらないんだよ』
そのために、僕は何をしなければいけなかった? それすら分からない。
後悔なんて、昼川の想いに気が付けなかった時点でもうしてる。
僕の最初の後悔は、中学校卒業式。呼び出された昼川の所へ、行かなかったことだ。
あの日から、ずっと僕は、後悔していた。
今更、昼川が僕のことを好きだったと聞いても、どうしようもないだろう。
僕だって「好きだ」と伝えたところで、昼川にはもう結婚する相手がいるし、子供も産まれる。幸せいっぱいな彼女を困らせることなんてしたくない。
『あの日、伝えられなかったことをちゃんと伝えて欲しいんだ』
寒かったはずの体が、なんだかあたたかくなる。誰かに抱きしめられているような、そんな感覚がして、それからのことは何も分からない。
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