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家を出てすぐに、どうしてここにいるんだろうと考えた。
明らかに中学生の頃に戻っている。
季節は、少ないけれどまだ道路の端に残っている汚れた雪の塊があるから、冬の終わり……と言ったところだろうか。カレンダーまで確認してこなかったから、今日が何月何日なのかも分からない。
中学生のうちはスマホだって持っていなかったから、確認する術もない。
とりあえず、学校に行けば何かが分かるはずだ。そう思って、懐かしい道を歩き始めた。
舗装された道路は真新しい。まだそこまで住宅のない道は向こうの景色まで見渡せた。商店街を抜けると橋を渡ってさらにまっすぐ進む。
「おーす、佑衣斗! あれ? 今日チャリじゃねーの?」
ラーメンまさみつの前で自転車に跨り走り出そうとしている政光の姿に、思わず足を止めた。
学ランに通学カバンにヘルメット。中学生の政光が目の前で動いていることに不思議な感覚になった。
「政光!?」
「……おう?」
「マジで、お前、政光?」
久しぶりに会った政光は、ラーメン屋らしい頭にタオルを巻いてガタイも良くなったいい意味で歳をとった政光だったのに。
目の前にいるのは、僕の目線より背は五センチほど高いものの、バスケで鍛えているとはいえ、まだ筋肉もそこまで付いていないヒョロリとした体型。僕の記憶の中で最も見覚えのある政光だった。
思わず駆け寄って、まじまじと顔を覗き込んでしまっていた。
「……どうした? 佑衣斗」
呆れたように目を細める政光に、ハッとして首を振った。
「いや、なんでもない」
「ははは、変なやつー! 小野ちゃん先生最後だし、話したいことあるから先行くぞー?」
「あ、うん」
豪快に笑うところは、やっぱり政光だ。ペダルを踏み込んで、颯爽と先に行ってしまった。
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