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「……ちょっと、恥ずかしい……かも」
「……え?」
そのまま、両手で顔を覆って俯いてしまうのを見て、あたりからヒソヒソと声が聞こえていることにようやく気がついた。
いつの間にか、さっきまでフォトスポットではしゃいでいた女子グループや、屋上に上がってきた生徒たちに囲まれていて、公開告白みたいな状況になっていることに気がついた。
若い奴って好きだよな、こういうの。
「ちょっと、ふたりきりになりたいんだけど、皆さん帰ってもらえます?」
周りに、にっこりと威嚇する笑顔を向けると、邪魔だという意味が伝わったのか、みんな慌てて反対側に去って行った。
「素直に赤くなるとこも、可愛い」
そっと近づいていって、ふるふると震えている昼川の肩を引き寄せて、胸の中に閉じ込めた。ほんと、かわいい。なんであの頃は昼川の行動にも表情にもなにも思わなかったんだろう。不思議なくらいだ。
「よ!? よ、夜野、くん!?」
驚いた声を上げる昼川が可愛くて、ぎゅうっと出来るだけ優しく抱きしめてしまう。
「ごめん、好きって気がついたら、ほんと、めちゃくちゃ好きだ」
自分の中に、こんな気持ちがあることを初めて知った気がする。昼川のことが、大好きだ。離れたくないし、離したくない。だけど──
「……ちょっと待って、昼川って、桜前高校に行く?」
「え……う、うん」
「……僕って、時ヶ崎高校に行くんだよね?」
「え……、う、うん……そうだよね。離れちゃうなぁって寂しく思ってたの」
昼川から離れて、自分の両手や体を確かめる。想いを伝えることができたから、消えるとか、そう言うことでもないらしい。しっかりと存在していることを確認して、落胆のため息をついた。
なんで高校受験のとこからやり直させてくれないんだよ。昼川と両想いなら、一緒の高校に通って毎日そばにいられるってのが一番なのに。どう言うことだよ。
「夜野くん……あの」
「なに?」
「えっと……夜野くんの、彼女に、なれるの? あたし……」
困ったように眉を下げて、不安そうな顔で見上げる昼川に、大きく頷いた。
「なれるもなにも、なってください! よろしくお願いしますっ」
頭を下げて頼み込む。
「わ! 顔、上げてよ」
昼川が慌てるような声を出すから、すぐに顔を上げると、目の前で照れながらも笑顔を見せてくれるから、一気にまた愛おしくなる。
「こちらこそ、よろしくお願いします……」
「うん……ありがとう」
また、今朝と同じだ。感情の波が湧き上がってくる。心の底から、嬉しいって感じて、涙腺が緩んでしまうから、なんとかぐっと堪えた。
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