第二章 再生、やり直し

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「夜野くんって、こんなに積極的な人だったんだね……」 「え……!」 「あ! ううん、違うの。あの……いい意味で、だよ。なんて言うか、夜野くんって、口数少なくてこんな風に話せるなんて、夢みたいで」  隣で慌てながら話す昼川に、僕は驚く。えへっと照れ笑いする彼女に胸がギュッと苦しくなった。  確かにさっきはつい抱きしめてしまったり、人のいる前で告白もしてしまった。昔の僕なら絶対にしない。出来ない。だから、昼川が不思議に思うのも頷ける。まさか「過去に戻ってきている」なんて馬鹿な話、信じてもらえるわけもないし、言うつもりもない。  いつ、また僕はあの孤独な自分に戻るのかも分からないから。だったら、今このあり得ないラッキーな状況を楽しんだ方が、得な気がする。  並んで歩く帰り道で、僕らは他愛のない話をした。懐かしさの中で、昼川が何を思ってこの頃過ごしていたのか、少しずつ知ることができた気がする。  入学式の時から僕のことを知っていて、気になってくれていたこと、クラスが一緒じゃなくても、部活の時に会えて嬉しかったこと、無口で普段はクールな印象の僕らしいけど、話すと穏やかで笑顔がすごくカッコいいって照れながら言ってくれたこと。  きっと、今日が終われば、夜眠りについてしまえば、この夢も覚めてしまうのかもしれない。だけど、それでいい。この一瞬のひと時だけでも昼川と一緒にいられたこと、想いが通じ合えたことが、本当に嬉しいから。もう、僕は死んだって構わない。  と、言うか、僕はどうなったんだっけ?  昼川と別れて家の前までたどり着いた僕は、ふと足を止めた。お昼を過ぎてしまっていたからか、夢なのに腹は空いている。背負っているスクールカバンも相変わらず重たい。  僕は、なんでここにいるんだろうか。今更になんだか怖くなる。
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