第一章 再会、君の想い

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 これまであった同窓会というものには、参加したことがなかった。大きいもので言えば成人式、それすらもだ。  高校を卒業して学力に見合った大学に進み、そつなくこなして、一般企業に就職した。仕事もそれなり。良くも悪くもない。やる気も特にない。目の前の与えられた仕事をこなすのみ。それ以上もそれ以下もしない。  人生楽しいか? と聞かれることがあるとするならば、僕は「別に」と答える。 「はい」でも「いいえ」でもない。  これまで、なにか行動をしてきたかと言えば、何もしていない。  中学の頃の僕を思い返してみたって、今と全く一緒だ。  はぁ、とため息を吐き出してからハガキをもう一度手に取る。  さっきは暗がりでよく見えなかったけれど、ハガキの右下には手書きでメッセージが添えられていた。 『お時間合えば来てくれると嬉しいです。私も行きます。昼川(ひるかわ)(あき)』  思わず、息を呑むほどに驚いた。 「……どういうことだよ」  同窓生代表のやつの名前なんてほぼ覚えていなかった。それなのに、遠慮がちにハガキの端っこに書かれた文字。そして、記憶に舞い戻ってくる名前。頭の中が、戸惑いと嬉しさで困惑する。 「苗字が変わっていないってことは、まだ結婚してない? もしかして……」  一旦、冷静になるために軽く頭を左右に振った。そして、立ち上がって冷蔵庫から冷えたビールの缶を取り出す。  これは週末の楽しみだ。まだ週半ばの水曜日になんて飲むために買っておいたわけじゃない。けれど、その場で勢いよく栓を開けてゴクゴクと半分近く一気に飲み干した。  冷たい液体が身体中に染み渡って冷えていく。ようやく冷静になれる気がしたけれど、まったく味がしない炭酸を飲んだ気分だ。  頭だけがぼうっと熱くなってくる。  ふらりとソファーに戻って、そのままの勢いでペンを取ると、ハガキの参加の文字に丸をつけた。  みんなに会いたいとか、懐かしいから行くとか、そんなんじゃなくて。  ただ、僕は、昼川璃に会いたいから行こうと思った。
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