第一章 再会、君の想い

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 目覚めてカーテンを開けると、まさにそこは雪国だった。今年の冬は雪が少ない、なんて言っていた昨日のことは、もう嘘になる。  準備をして昼になる前に、言われた通りに政光の実家のラーメン屋へと向かった。  一面の雪景色だけど、積雪量はそれほど多くもない。すでに道路は除雪車が来た後なのか、歩道側に山が出来ていた。歩道は歩道で、きちんと人一人通れるほどの道が出来ていた。  小さい頃は、区長のおじさんが毎朝子供達が学校へ行く時間の前にこうして雪かきをして、道を作ってくれていたのを思い出す。今でもそれは受け継がれているのかと、なんだか懐かしくなる。  あの頃は何とも思わずに歩いていたけれど、寒い中早起きして雪かきをすることは、決して楽なことではない。  ありがたいことだったんだな、と感じながら、まだあまり汚れていない雪に足を落とした。  ずっと同じことの繰り返しで生きてきた気がするから、同窓会のハガキはありがたかったのかもしれない。こうして、あの頃のことを思い出しながら、今になってわかることもあるのだから。  あの時知らなかったことが、もしかしたら、まだあるのかもしれない。  そう思うと、ようやく僕の心にもドキドキとか、ワクワクとか、子供の頃のような好奇心が少しだけ湧き出てくる。  今更とは思うけれど、それでも、気がつけないよりはずっといいのかもしれない。 *  「ラーメンまさみつ」の名前は、僕の子供の頃から変わらない。政光のおじいちゃんのお父さんの名前らしい。政光はおじいちゃんに名付けられたと聞いたことがある。初代と同じ名前を付けられて、思惑通りラーメン屋を継いだ政光は立派だと思う。  小学校の時から、「俺はラーメン屋に、なるっ!」と、アニメの主人公さながらによく言っていたのを覚えている。  看板や表の壁に掲げられた写真付きのラーメンメニューはあの頃にはなかったから、きっと政光のアイデアだろう。  引き戸を開けると、昨日政光から香ってきたラーメンスープとにんにくの匂いが漂ってきた。暖簾をくぐって入ると、威勢の良い声で「いらっしゃいませー!」と聞こえてきて、政光と目が合った。 「おう! 佑衣斗! いらっしゃい。こっち、カウンター席でもいいか?」 「うん、どこでも」  ちょうど空いていたカウンターの一席に誘導されて、少し高さのある椅子に座った。  四角い正方形の空間に、カウンター席が四席、座敷テーブル席が二つと、そこまで広くはないことを今になって知った。学生のうちはそんなこと気にしたこともなかったけれど。
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