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第3話 挑戦状を叩きつけられたんだが
■クラン【夜の円卓】 クランハウス
中央に大きな円卓が置かれているクランハウスのコネクトポイントに、はるまきちゃんが現れる。
すでに他のメンバーはいて、バーチャル空間にもかかわらず飲み物を飲んで盛り上がっていた。
アルコールを摂取してないのに酔ったりしないはずだが、雰囲気に酔っているのだろう。
『あけましておめでとう、はるまきちゃん』
『あけましておめでとうございまーす、リアムさん♪』
はるまきちゃんに声をかけたのは長身で騎士の礼服のような華美な衣装に身を包んでいるリアム・ファルコンだ。
金髪で碧眼、わかりやすいイケメンで銃よりもロングソードのほうが似合いそうな風体である。
年齢は20代後半くらいだろうが、ゲームのアバターである限り中の人がそうとは限らなかった。
はるまきちゃんが初めてシャドマセを始めた時にいろいろ教えてくれた先輩であり、そのこともあってはるまきちゃんはクランに入っている。
『あけおめです。はるまきおねーちゃん!』
『あけましておめでとうだよ、アリスくん!』
パタパタとはるまきちゃんの方にかけて来たのは中性的な外見をした栗色のくせ毛の少年のアリスだ。
はるまきちゃんは近づいて抱き着いてくるアリスをむぎゅーと抱き返す。
豊満なはるまきちゃんの胸のアリスの顔が半分ほど埋まった。
微笑ましくも、一部ではうらやましがられる光景である。
『ん……』
:あけましておめでとうございます、はるまきちゃん
『ソルさんも、あけましておめでとうございます』
無言で鋭い視線を向けてきたボロボロの軍服にマントを付けた男にはるまきちゃんは笑顔で挨拶を返す。
ソルと呼ばれた男は登録名を兵士となっているが、無口で名乗らない為、いつしかソルジャー→ソルという愛称が定着していた。
会話も主にチャットでしている。
この場にははるまきちゃんを除き女性アバターの姿はない……いわゆる、はるまきちゃんハーレム状態だった。
そのことについてはクランリーダーのリアムは何も言わないので、誰も言わない。
『じゃあ、はるまきちゃんも来たので改めて乾杯しようか』
『ありがとうございます。オレンジジュースにしますね♪』
はるまきちゃんの手にオレンジジュースが召喚されたのを確認するとリアムが乾杯の挨拶をした。
『それでは【夜の円卓】の今後を祝福を! 乾杯!』
『『乾杯!』』
乾杯をしたとき、タイミングよくはるまきちゃんへシステムメッセージが届く。
はるまきちゃんがウィンドウを呼び出してメッセージを開くと、ツインテールの少女がなだらかな胸を張って宣言をする動画メッセージが再生された。
『はるまきちゃんへ、スティルハンターより、挑戦状を叩きつけるわ! 4対4のスクワッド戦よ。こっちは全国のトップランカーをそろえてくるから、あなたもメンバーをしっかり選ぶことね! あんたになんか、お兄ちゃんを渡さないんだからっ!』
言いたいことを言い終えるとメッセージの再生が止まり、リプレイボタンが出てくる。
メッセージを見たはるまきちゃんは固まっていた。
『スティルハンターってあのギリースーツの小柄なランカーだったが、女の子だったとはね……声を聴いたものはほとんどいないから、そういう場合もあるか』
:スナイパーでしたから、通信をほとんどしないのもさらに謎の人物観をだしていましたね。
『はるまきおねーちゃんとスティルさんのお兄さんはどんな関係なんでしょう?』
ガヤガヤとクランメンバーが騒いでいる中でも、はるまきちゃんは接続が切れたかのように固まり続けていた。
『はるまきちゃん、大丈夫かい?』
『あっ、はい! 大丈夫ですよー! スクワッド戦は私、ほとんど経験ないからどうしようかなぁ~なんて』
『はるまきおねーちゃんなら、募集すればすぐにノラは集まりそうですよね』
:だが、相手がトップランカーぞろいとなれば、連携が重要。
『ふむ、それならば……僕達、【夜の円卓】の出番じゃないかな? ちょうど全員合わせれば4人だよ』
リアムの言葉にアリスも、ソルも頷いてはるまきちゃんを見る。
『みんな、ありがとう! うん、知り合って長いみんななら信じられるよ』
『じゃあ、スクワッド戦の役割確認のため、このあと訓練場で動いてみようか』
『……賛成だ』
『『ソルさんがしゃべった!?』』
意外な人物の意外な声を聴いて、驚きながらも訓練場での連携実験とリアムによるスクワッド戦の解説を聞いていたら、いつの間にか夜になっていた。
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