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第5話 悔しいという感情を久しぶりに得たんだが
■Team【静かなる狼】
試合の仕切り直しがなされた時、フィールドは北側から南側に移っていた。
場所の切り替えもスクワッドバトルの特徴でもある。
メンバーは集まり、すぐに反省会を行った。
『作戦を変えていこう。事前に打ち合わせた作戦のうち【ハンティングネット】を実行しよう』
話を切り出したのは、冷静な判断なこのチームでできるヴォイドだ。
ランキングは12位でスティルよりは上なのだが、ソロではなくチーム戦で力を発揮するタイプである。
今日の試合前に事前の打ち合わせで、決めていた作戦名を告げたら全員がその通りに動いた。
今回はスティルもアサルトライフルを持って移動している。
:なんか軍隊みたいに綺麗な動きになった!
:ここから逆転するか!
:ワクワクが止まらないぜ!
チャット欄も盛り上がり始め、静かなる狼たちをドローンカメラが追いかけていった。
廃病院に入っていき、導線を潰していく様子に無駄な動きはなく、進路をクリアにしながら中央拠点へあえて敵を誘導していった。
ここまでは作戦通りである。
次なる一手はブラッドのチャフ&スタングレネードから始まった。
■Team【夜の円卓】
バァァンとグレネードがはじけて、レーダーが死に続いて耳がキーンとなるような爆音が拠点となっている大浴場に響く。
元が大浴場だったこともあって、音の反響がよくスタングレネードの効果が二割ましだ。
『通信ができない!? みんな、無事ですか!?』
思わず、大きな声を上げてしまうアリスだが、この状況では悪手である。
声を上げたアリスのほうに向かってまずるフラッシュが光り、撃たれたのがわかった。
隠れているはるまきちゃんは逃げるために周囲を伺うが、耳鳴りが酷いこととレーダーで敵の位置がわからないことで、上手く動けないでいる。
:はるまきちゃんピンチ!?
:がんばえー、はるまきたん!
チャットからは応援メッセージが流れているが、はるまきちゃんは見ることはできない。
もちろん、みれる状況であったとしても、そんな余裕はなかった。
制圧拠点にはチームが入り乱れているので、ゲージは増えずに停滞しているのだけがわずかに確認できたことである。
静かに匍匐前進するようにはるまきちゃんが動いていると、頭部にナイフが刺さった。
振り向けばヴォイドがにやりとした笑みを浮かべている。
特殊スキルによる瞬間移動をしたため、気配を察知できるはるまきちゃんでもとらえきれなかったのだ。
はるまきちゃんが悔し気な顔を浮かべながら画面から消えていく。
:さすが全国ランキング上位だ
:はるまきちゃんも、いうてまだルーキーだからなぁ
:新人なのを忘れるほど、はるまきちゃんがすごいねん
消えていったはるまきちゃんを見送るチャットには否定的な意見はなかった。
◇ ◇ ◇
倒されて、次のフェイズまで見ることしかできなくなった俺はギリリと歯ぎしりをする。
【悔しい】という感情を久しぶりに得たが、すぐに深呼吸して冷静さを取り戻した。
「やってくれたな……確かにああいった装備で包囲されたら対応できないか、このゲームは本職への修業になる」
画面でははるまきちゃんとアリスが倒れたことで数の差で対応ができず、リアムがスティルに狙撃されたところで決着となる。
第三フェイズが始まる……泣いても、笑っても最後の戦いだ。
「たかがゲームと思っていたが、ルーキーから上にはこんな奴らがいるわけだな。あらゆる手段を使って目的を達成するやり方を知っているのはお前らだけでないことを教えてやる」
俺は自分でも気づかぬうちに笑みを浮かべていたのを、口元を触ることで気づく。
目の前にでている試合開始のボタンを押して、俺ははるまきちゃんとして、再び戦場へ戻った。
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