悪役令嬢と言われましたけど、大人しく断罪されるわけないでしょう?

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「……それは大帝国側の総意か?」 「元より皇帝陛下はわたくし達がこちらで暮らすことを好ましく思っておられませんでした。こちらの国以上に大きな地位と権力を持っていますからね。それに……」 「カティアの婚約者のことを知ってからはさらに批判的でしたね」  大帝国の皇帝陛下───つまり私たちの伯父様はお母様のことを溺愛していますし、その溺愛する妹の子供が婚約者やその家族に良い態度を取られていないとなると批判的なのも仕方ないのかもしれません。 「そうか……この国に留まると言う選択肢はないのか?留まってくれるのなら何でもする」 「息子たちが留まりたいと言うのなら考えますけど……」 「俺たちは別にこの国に未練などないからどちらでも良い」 「私も同じく」 「と言うことですので、明日にでもこの国を出ますわ。それでは準備もありますのでこれで失礼させて頂きます」  お父様もお母様もお兄様たちも、もちろん私もこの国に未練などないのは分かりきっていたことでしょうに。元々はお父様がこの国で爵位を持っているからお母様が嫁いで来られたのですし、お祖父様たちだって好きにすれば良いと仰っていたそうです。今回の件で家名まで傷付くことになりそうでしたし、爵位のことは親族に継がせるなり何なりされるでしょうね。  何の未練もなく、どういうことだと注目を浴びながらも会場から出て行こうとしたところで、一人の男性が呼び止めました。その男性はこの王国の西にある隣国、ガルシア帝国の皇太子アルバート殿下。文武両道、容姿端麗な国民に慕われている方です。 「ローデント公爵。例の件ですが、条件を満たしましたのでよろしいでしょうか?」 「ああ」  例の件とは何のことかと首を傾げていると殿下がこちらに向かって歩いて来られます。例の件、とは私に関わることなのでしょうか。 「カティア嬢……いえ、カティア皇女。お久し振りですね」 「え、ええ……お元気そうで何よりです、アルバート皇太子殿下」 「婚約破棄されたのですよね」 「はい、そうですね」  ご覧になられていた通り。そんな分かりきっていることを確認してどうするのかと首を傾げつつ、次の言葉を待っていると小さく頷いた殿下が私の前で跪く。  そのまま殿下は、どういうことだと困惑する皆様を気にも留めていない様子で私に手を差し出してきました。 「ご存じの通り、私はずっと貴女をお慕いしておりました。これで十三回目の求婚です。今までは婚約者がいるからと断られていましたが……公爵が、とある条件を満たすことが出来たならもう一度貴女に求婚するチャンスをくださるとおっしゃられました」 「……条件、ですか?」  それが先程のお父様との短い会話に恐らくですが関係しているのですよね?ということは、例の件と言うのは私への求婚のことなのでしょうか。……いえ、まだそうと決まったわけではありませんね。
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