悪役令嬢と言われましたけど、大人しく断罪されるわけないでしょう?

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 前向きに検討してほしい、そんな風に語りかけてくる殿下の表情は、温かい微笑みの中に少しだけ切なさが混じっているように見えました。  少し不安でした。殿下はずっと私に愛を囁いてくださっていましたけど、私には婚約者がいましたからお断りするするしか出来なかったのです。それでも関わりを持って殿下のことを知っていくうちに「氷の皇太子」と言う二つ名が付いていた過去も、本当は温かい方だったのではないかと思うようになりました。真実は分かりませんけれど、私はそれだけ温かい心を持つ方だと思ったのです。  それでも、いつまでも振り向いてくれない相手を愛し続けることは難しいと思います。ですから私が彼のことを好きになった今でも気持ちを伝えられていない以上、いつ心が離れて言ってもおかしくはないと考えていました。 「アルバート皇太子殿下、ひとつお聞きしたいことがあります」 「なんでしょうか?」 「殿下は諦めようとはお思いにならなかったのですか?こうして婚約破棄されなければ私がの気持ちがどうであろうと貴方を受け入れることは出来ませんでした」 「私は貴女に恋した時からただの一度も諦めようなどと思ったことはありませんよ。本当に手に入れたいものは口に出さないと伝わりませんし、行動しなければどうにもなりません。諦める前に出来ることはたくさんありますから」  そうですか……別に、この質問に何か意味があるわけではありません。ただ疑問に思っていたことを尋ねただけですので。 「殿下に降り向いて頂くと決めて、私もそれなりに覚悟はしていました。どんなに諦めるつもりがなくとも殿下に見て頂ける保証はありませんしね。……このような回答で良かったですか?」 「はい、ありがとうございます」 「ええ」  殿下は私を婚約すると言う意味を正しく理解されていると思います。こちらの方が国力はありますから結婚することになれば殿下が婿入りする可能性も捨てきれません。その場合は皇太子の座を降りなければならなくなります。 「お父様、皇帝陛下はこの件に関して何とおっしゃられていました?」 「カティアの好きなようにすれば良い、と。大帝国も世継ぎには困っていないからな。婚約するならカティアが嫁ぐことになるのではないか?」 「分かりました。───皇太子殿下、国家間の問題についてはお父様のお言葉の通りです。詳しいことは今後決めることになるでしょう」 「っ!と言うことは……」 「私も、殿下をお慕いしております。私で良いのであれば受け入れたいと思います」  幸い、どちらの国の皇帝陛下も私たちのことを認めて下さると思います。それでもお互いに皇族である以上、政治が絡んでくることもあるでしょうね。大国同士で縁を結ぶと言うのは良いことですけれど、同時に大変なことでもあります。友好関係を結んでいますから大丈夫だとは思いますけどね。  それでも良いのならと最終確認も兼ねて告げると、殿下の表情が明るくなりました。 「ありがとうございます……!」
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