第13話 まるで恋する乙女のように。

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 オリヴェルさんが何かを言いかけたその時、きーくんのブレスレットがシャラ、と音を立てて揺れた。  オリヴェルさんの視線が、ブレスレットを捉える。 「……この腕輪は、元の世界のものですか?」  オリヴェルさんにブレスレットのことを聞かれただけなのに、何故かどくん、と胸が跳ねた。 「あ、はい……。ここに召喚された時、付けていたものですけど……」  私の声が聞こえているのかいないのか、オリヴェルさんはじっとブレスレットを見続けている。 「ずっと身に付けたまま外されていないとは……随分と大切にされているのですね」 「──っ、はい……っ。記念日に貰った物ですし、とても気に入っているので……っ」  私は何とか動揺が伝わらないように努めて返事した。  経験したことがないほどの緊張感に、私の心臓の鼓動が速くなる。  何故かこのブレスレットをくれたのがきーくんだということだけは、彼に知られちゃいけない──そんな予感がしたのだ。 「……うむ。……気のせい、か。……ああ、これは失礼しました」  オリヴェルさんはそう言うと、ずっと握っていた私の手を離した。
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