第13話 まるで恋する乙女のように。

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 私は身体をのそのそと起こすと、カップにお茶を注いで口に含む。  お茶を飲んでみると、身体に水分が行き渡っていく感じがして、自分の喉が渇いていたんだと気付く。 「……ふう」  お茶を飲んだからか、ずっと速かった胸の動悸が、ようやく落ち着いてくれた。  私は机の上の本を一冊手に取った。 「さあ、昨日の続きを読もっと」  そして、ワザと大きな声で宣言した。  ──誰もここにはいないのに、誰かに聞かせるように。  どうしてこんなことをしているかというと、フィテーラの件で感じた違和感が疑惑となって、ブレスレットを見たオリヴェルさんの言葉で確信したから。  ここの会話──もしくは私の声を、オリヴェルさんもしくは他の誰かが聞いているんじゃないか、と。  元の世界でいう盗聴器のようなものが、この世界でも存在するのかも。  ……それとも、そんな魔法があるのかもしれない。  もし私の予想通りなら、これからの発言は気をつける必要がある。  でも私は昨日、絶対に元の世界に帰る、と口に出してしまった。  その言葉すら、聞かれてしまっていたら──。
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