1、鬼が不細工だって誰が言った?

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1、鬼が不細工だって誰が言った?

「ミサトは優しいね。いつも笑顔で……」  昨日の別れ際、泣きながらほほ笑んだアカネ。  しかし今は顔を真っ赤にして、ツリ目になって私をにらんでいた。 「信じらんない! ミサトに騙されてたなんて!」  私は首を横に振って「本当に、知らなかったの」と弱々しく訴える。しかしその態度が彼女には気に食わなかったらしい。  パン――と高い音が響く。二拍ほど遅れて自分の頬が彼女の右手に叩かれたのだと分かった。 「アカネ……?」  私は痛みより現実味のなさに思わずニヤッと笑ってしまった。 「ミサトのそういう笑い方、本当はキライだった。ヘラヘラしてさ。でも、ミナトくんはその笑顔が好きなんだって。ミナトくんも大概だよね」  いやいや、フラれたからってミナトくんまで敵のように言うのは違うのではないだろうか――と思っても言わない。ようやく頬がジンと痛みだして来て、口が上手く開かなかったのもあった。 「ミサトのバカッ! 絶交よ、大っ嫌い!」  アカネはクルッと回ると、そのまま制服のスカートをはためかせながら走っていった。 「アカネ……ごめんね」  かすかに残るアカネの香り。ミナトくんが好きだと言っていた、私とおそろいのボディソープの香り。私はようやく口元が歪んだ。笑顔が消えた。 「でも、私、知らなかったんだよ。ミナトくんが私のこと好きだったなんて……本当に、さ」  私は小さくつぶやく。
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