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私は昔から周りを気にする性格だった。
大人も子どもも、相手の年齢は関係ない。とにかく触れられず、怒られず褒められず、そっとしておいてもらえるように振る舞ってきた。そうするうちに、私はどんなときでもヘラリと笑ってしまう癖が付いてしまった。
それでも初対面の人からは好印象を覚えられやすかった。たまにしか会わない親せきの人たちからも「ミサトちゃんは大人しくて良い子ねえ」とよく言われたものだ。
しかし、学校ではその化けの皮もうまく機能しなかった。
最初は笑顔の私を「良い子そう」と思ってみんな話しかけてくれる。でもいつの間にか「なんか、いつもヘラヘラしてるね」と言って去っていった。
「その場しのぎの知り合いぐらいならちょうど良いけど、友だち、ましてや親友になんてできないよね、鈴木さんは」
ハキハキ言うタイプの上級生にそう言われたとき、私は「そうですか、あはは」と笑ってしまった。今思えば、そのときが人生で最初の大失敗だったのだが、そのときカッとなった上級生に張り倒されたときも、額を切って流血しながらニヤッと笑ってしまった自分を「どうしたものか」と思ったものだった。
そのときからまだ半年足らず。十二分に反省していたくせに、活かせていなかった私は、ようやくできた友人を失った。
「やってらんないよ、まったく」
五分か十分か――階段でうずくまっていた私はようやく立ち上がって階下へ向かった。ミナトくんたちはもう校門を出たころだろう。私はしずかなろうかを歩いていった。
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