2、馬頭、お前はお呼びでない

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「そうだ、お前のせいだ、馬頭」  閻魔様もうなずいた。 「よし、小娘。一年の猶予を与えよう」  私は目をかがやかせた。 「生き返られるんですね!」 「一年だ」  閻魔様は別の小鬼を呼ぶと、黄ばんだ紙に筆を滑らせた。 「一年のうちに石の代わりに徳を積め。積めるだけ積め。その量で地獄行きか天国に行けるか決めてやろう」 「……えっと、死ぬのは確定?」 「ああ」  私は頭を抱えた。  一年後、どっちみち死ぬ予定だったんだ……でも、今このまま引き下がったら地獄行き。一年だけでも生き返って徳を積めば、少なくとも天国に行ける。  それなら――。 「分かりました。徳を積みまくります」 「決まりだな――馬頭」  馬頭は不服そうに「ぶるるん」といななきながら「はい、閻魔サマ」と返事をした。 「馬頭。今回の責任として一年間、この小娘の監督係を命じる。お前の仕事の良し悪しによっては昇級も降格もあると肝に銘じろ」 「げ」 「返事は?」 「……はい」  閻魔様は筆をおくと、私の方をまっすぐに見下ろした。体中にビリリと電気が走るような怖さを今さらながら感じていた。 「一度死んだ命、大事にしろ。あと、この世界でのことを公言するなよ。したところで、お前が変人あつかいされるだけだろうが、それでも、だ」 「わ、分かりました」  私は神妙にうなずいた。すると杓子が勢いよくのびた。 「乗れ」 「はい?」 「良いから、これに乗れ。現世に送る」 「あ、はい」  私は何も疑わずに杓子の先に飛び乗った。 「ふんすっ!」 「うぎゃああああああああああああ」  閻魔様は前振りなしで杓子を思いっきり上へと押し返した。私はまるでテニスボールのように――……。
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