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「そうだ、お前のせいだ、馬頭」
閻魔様もうなずいた。
「よし、小娘。一年の猶予を与えよう」
私は目をかがやかせた。
「生き返られるんですね!」
「一年だ」
閻魔様は別の小鬼を呼ぶと、黄ばんだ紙に筆を滑らせた。
「一年のうちに石の代わりに徳を積め。積めるだけ積め。その量で地獄行きか天国に行けるか決めてやろう」
「……えっと、死ぬのは確定?」
「ああ」
私は頭を抱えた。
一年後、どっちみち死ぬ予定だったんだ……でも、今このまま引き下がったら地獄行き。一年だけでも生き返って徳を積めば、少なくとも天国に行ける。
それなら――。
「分かりました。徳を積みまくります」
「決まりだな――馬頭」
馬頭は不服そうに「ぶるるん」といななきながら「はい、閻魔サマ」と返事をした。
「馬頭。今回の責任として一年間、この小娘の監督係を命じる。お前の仕事の良し悪しによっては昇級も降格もあると肝に銘じろ」
「げ」
「返事は?」
「……はい」
閻魔様は筆をおくと、私の方をまっすぐに見下ろした。体中にビリリと電気が走るような怖さを今さらながら感じていた。
「一度死んだ命、大事にしろ。あと、この世界でのことを公言するなよ。したところで、お前が変人あつかいされるだけだろうが、それでも、だ」
「わ、分かりました」
私は神妙にうなずいた。すると杓子が勢いよくのびた。
「乗れ」
「はい?」
「良いから、これに乗れ。現世に送る」
「あ、はい」
私は何も疑わずに杓子の先に飛び乗った。
「ふんすっ!」
「うぎゃああああああああああああ」
閻魔様は前振りなしで杓子を思いっきり上へと押し返した。私はまるでテニスボールのように――……。
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