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「大陸だ!!」
「この大陸に生まれ故郷の湿原がある!!」
「ただいま!!僕らの生まれ故郷!!」
「ただいま!!」「ただいま!!」
ツル達は、眼下に見たことのある街や村、山脈や川を見る度に胸を期待でときめかせた。
「旅の途中で死んでいった仲間たちにこの風景を見せてやりたかった・・・」
仲間の中には、この死出の渡りの犠牲になった仲間を思って感極まって涙を流す者も居た。
「もうすぐだ!!もうすぐ故郷の湿原だ!!」
仲間たちは、巨大な湿原に住むヨシキリ達やカモ達といった鳥達やシカやキツネ、ヒグマといった獣達にまたしばし暮らすと思うと胸がどんどん沸いた。
「もうすぐだ!!もうすぐだ!!」
「もうすぐ!!もうすぐ!!あの森を抜て線路を越えて・・・」
「あれ・・・?」
「あれ?」「何処?」「何処だよ?!」
「リーダー!!このだよね?私達の生まれ故郷・・・」
「うん・・・僕の土地勘の記憶によれば・・・」
ツルの群れは、眼下に拡がる広大な黒光りする板だらけの土地の回りをグルグルと旋回していた。
バサバサバサバサバサ・・・
「やっぱり・・・帰ってきてしまったか・・・」
上空を旋回するツルの群れに、一羽のカラスがランデブー飛行してきた。
「やあ、久しぶり。カラスのクロシ君。なんだい?浮かない顔をして?」
「皆に伝えたい事がある・・・絶望しないで聞いてくれ・・・」
リーダーツルのベクターにカラスのクロシは、ヒソヒソと耳打ちした。
「ええーーーーーっ!!ここが、僕らの生まれ故郷の湿原の成れの果てだって!?」
ツルの群れは力尽きたように、生まれ故郷の巨大な湿原を人間に埋め立てられておびただしいソーラーパネルが1面に敷き詰められた一角に降り立って愕然とした。
「人間に生まれ故郷を奪われたーーー!!」
「ここの人間達は土地を今まで保護してきて、優しいから信じてたのに!!」
「裏切られたー!!人間に裏切られたー!!故郷を返せ!!僕達の生まれ故郷を返せよ!!」
「死んでいった仲間たちよ・・・無念だ・・・」
「僕達、これから何処へ帰れというんだ・・・!!」
〜ただいま!!わが故郷よ!!〜
〜fin〜
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