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それも離婚した貴族の女性やそれなりに遊び慣れた階級の高い暇な貴族女性を相手にしているらしく女遊びをしていても揉めた話は聞いた事がなかった。
まあ、周囲はそんなブロスに眉をひそめていることは確かだったが…
⁂⁂⁂
そんなある日ソルは寝坊した。
慌てて支度をして調理場に急ぐ。そして料理長に叱られて、外庭の水場で昼食用の野菜を洗っている時だった。
「お前。名は?」
はっと顔を上げるとブロス殿下だった。きっといつもの暇つぶしなのだろう。彼は王宮内をあちこち見て回るのが好きらしいと聞いていた。
でも、聞かれれば答えないわけにはいかない。相手は皇太子なのだから。
ソルはビシッと立ち上がって答えた。
「はい、ソルと言います」
「ソル、こちらに」
手招きされてソルは濡れた手をエプロンで拭きながら近づいた。
「これをやろう」
そう言って差し出されたのは、貴族しか食べられない菓子だった。
ふわふわしたその菓子はたっぷり卵が使われているのだろう。まっ黄色の艶やかな色でとてもおいしそうだった。
「こんなもの…いただけません」
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