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これは名案とばかりにニコニコと微笑む彼に、彼女は呆れた眼差しを向ける。
「イブくんは、大学は行くつもりなの?」
「もちろん! ミヤと幸せな家庭を築くためには、僕がしっかりと稼げるようにならなくちゃ!」
青みの強い緑色の瞳をキラキラさせて、胸の前で拳を固く握り締めた彼を見た彼女は、はぁっと大きな溜息をついた。
「じゃあ仮に、イブくんが大学を卒業して働き始めるまでが今から九年後として……」
「ん……?」
「私が高校を卒業するのが来年で……そうなると、イブくんが養ってくれるようになるまで、少なくとも八年間はあるんだけど、その間、私にはニートとして過ごしておけってこと?」
「あっ! えっと……」
事の重大さに漸く気付いた彼はあたふたし始め、
「……ミヤ? 僕と一緒に中等部からやり直さない?」
「不登校とか、何か事情があって授業を受けられなかった人のための夜間学校はあるみたいだけど、私はきちんと履修済みだからやり直しは無理よ」
対して彼女は冷静。
「うぅー。やっぱりミヤより先に生まれたかったー」
両手で頭を抱えて唸る彼氏を横目に、
「私ね……将来何になりたいのか、まだ決めてなくて。進学を機に、もっと色々真剣に悩みたいの」
彼女は真面目な表情でぽつりと呟いた。
小さい頃から『お兄ちゃんのお嫁さんになる!』という夢を抱き続けてきた彼女にとって、他の未来というのは想像も出来ないものだったから。
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