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三人の天使
そろそろ梅雨入りのはずだが、あおぞら商店街の上空にはぷかりと丸い雲が浮かび、今日も気持ちのいい景色が広がっている。
午後3時。
山一金物店従業員の山本悟は、喫茶パレスのカウンターで好物のドライカレーを頬張っていた。
黙々と食べている隣からは、さきほどから青果店店主の大きな声が聞こえる。
「嫁さんがなかなか帰ってこなくてまいったよ。二代目は今頃昼メシか?」
店主は、小川青果店とプリントしたタオルを首にかけ、砂糖もミルクも入れていないコーヒーをくるくるとかき回す。
健診で軽い不整脈を指摘され「嫁さんに禁煙を約束させられた」と言っていたから、おそらく手持ち無沙汰なのだろう。口ではまいったと愚痴りながらも、約束はしっかり守る。結婚して四十年の仲良し夫婦は、いまも二人三脚で青果店を営んでいる。
喫茶店マスターの花森徹が、小川の前に個包装のチョコレートを置いた。高カカオで糖類ゼロタイプなのは、マスターの思いやりだ。悟とあまり年齢が変わらないはずだが、さりげない気くばりにいつも驚かされてしまう。
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