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「基! 逃げるな!」
悟の顔を見るやいなや背中を向けた幼なじみに、思わず大きな声がでる。
まさかここで再会できるとは予想していなかった。でも見つけたからには逃すわけにはいかない。
慌てる基とは対象的に、男は落ちついているようだ。悟の顔を見たあと、隣に立つ父親に目を向ける。
二人は、しばらく無言のまま視線をかわしていたが、男のほうが観念したように口をひらいた。
「山一さんですね。宮野と申します」
そして、手をひざに添え
「直接お話するのは初めてですが、山一さんのことは存じあげておりました」
と、腰を折った。
四人は宮野の後始末が終わるのを待って、24時間営業のファミリーレストランへ入った。宮野と基は商売道具を乗せた車で車中泊の予定だったらしく、座って話せる場所がそこしか見当たらなかったからだ。
一番奥まった席で、人数分のコーヒーをテーブルに並べる。夕飯の時間はとうにすぎているが、食事を楽しむ気分ではなかった。
店内はほどよくざわついていて、深刻な様子の四人に注意をはらう者はいない。
宮野がコーヒーで唇を湿らせ、口火を切った。
「先月お会いしてから、いつかこんな日がくると思っておりました」
静かな声は、まるで他人事のようだ。
呆然として言葉のでない悟に代わり、父親が厳然と言いきった。
「あんたの口から直接聞きたい」
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