人を騙して得た金で週末僕は君を買う

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 メガネのレンズ越しに見た週末の渋谷の街はかすんでいた。 いつまでも鬱陶しいマスクのせいで、塞がった鼻や口からもれだす自分の息にいい加減嫌になる。  僕はスマホから思ってもいない感謝の言葉を口にしたあと会話を終えると、すぐに電源を落とし、プライベートのスマホを取り出した。  出会い系のアプリを複数立ち上げ、適当にやれそうな女を物色するために横から流れてくる女のプロフィールとルックスを視認しては、スワイプを繰り返し、大きなため息のあと空を眺めた。  あぁなんてヘンテコな空だ。  夕方まで続いた雨が嘘のように止み、十月だと言うのに夜になって八月のような蒸し暑さに苦しめられるなんて思ってもいなかった。  一週間の労働で少しだけ気だるくなった身体を慰めるために僕は諦めるわけにはいかなかった。そのうちスワイプをいたずらに繰り返している指が広告をタップする。有名どころのマッチングアプリ以外のものにはたまに近隣の風俗店を紹介する広告が飛び出してくることがある。クソの役にも立たないネット広告も今の世界で生き抜くためには何ふり構わない気概を感じながらも、僕は合法ロリっ子大集合と書かれたクラブの名前に思わず息を止めた。  もう一度、今度は意思のあるタップ。  風俗店の予約フォームに飛ばされて、バカみたいに大きな女の顔写真と、プレイのオプションの説明、各種コースの金額設定がずらりと並んでいる。僕はその中でもひときわ目立つ「チェンジは三回までサービス週間、オプション強化中」と金色のフォントで誇らしげに表示されていて、僕はそれが可笑しく感じた。 「誰でもいいからすぐ来れる子を、いやあんまり若すぎても……こっちも三十近いからさ」  そう言って通話を切る。  そういえばホテヘルなんて初めてだった。というよりまだそんな性産業が成り立っていたことにも驚かされる。この街の大抵の人間はマッチングアプリで相手を探して一夜限りの刺激を楽しんでいるのだから、わざわざお店に予約をとって風俗嬢のクオリティーよりも高い報酬を払うなんてコスパが悪くて利用しない。なんせ一駅先に行けば個別で性交渉が可能な女性は星の数ほどいる。つい先週夜をともにした女性も性に奔放な女性で、刺激を求めて不倫がやめられないファンキーガールだった。  僕は渋谷の街を一通り眺めてから、しばらく立ち尽くしスマホをポケットに押し込んだ。それからつまらなそうにスーツについた埃を払うと人通りが激しい週末の渋谷に再び足を踏み入れた。
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