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1 社会人一年生 美里
「え? 一人暮らしをしてから言わなくなった言葉?」
私の質問に同僚の友梨佳が首を傾げる。
「うーん、なんだろうな?」
すぐには回答が出てこないようだ。
「美里はあるの?」
友梨佳の質問に、私は大きく頷いた。
「色々あるけど、一番は『ただいま』かな」
友梨佳はふむむと唸る。
「アタシは言うよ、一人でも。『行ってきます』も、『ただいま』も」
だってさ、と続けて友梨佳が説明する。
「一人暮らしの女性は犯罪に巻き込まれやすいって言うし。声がけによって、『誰かいるのかな?』ってカモフラージュにもなるし」
なるほど、と思った。
流石はしっかり者の友達だ。
「それに予定が無くて家に籠もる日、一日誰とも話さずに終わる時がある。そうすると、『アレ? アタシ、声出るのかな?』 って不安になる時もある。だからアタシはそこらのコンビニに出かける時も言う。『行ってきます』と『ただいま』を」
一人暮らし、アルアルなのだろうか。
日曜日、どこにも出かけずに家でのんびりしていると、誰とも話さない日。
気にしたことはないけれど、友梨佳の言っている事は分かる。
一人は楽で、そして苦しい。
特に仕事の悩みがある時は。
昼休みはこんな話をしているだけでも、あっという間に始業時間になる。
休憩室から仕事に戻ろうと立ち上がると、友梨佳がニヤッとして言った。
「最近見つけたのだけど、ちょっといい所があるの。今日、仕事帰りにご飯ご一緒しない?」
いい所って、なんだろう?
そう思いながら、私は頷いた。
帰っても、結局一人だし。
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