1人が本棚に入れています
本棚に追加
僕を見てくれる人が現れるなんて、あの時は思ってもみなかった。
彼のことでさえ、ただの同情からくれる優しさなんだと思っていた。
あなたを、お祖父ちゃんと呼んでもいいですか?
あなたの孫でいていいですか?
僕は東馬さんの兄になってもいいですか?
答えが返ってくることのない問いを胸に、彼のお墓を振り返る。
『当たり前だよ、春彦』
耳の奥で彼の……祖父の声が聞こえた気がした。
「まさか二十歳にもなって弟ができるとは思いませんでした」
「……! ふふ、おれもです」
垂れた目をさらに垂れさせて笑う東馬さんの笑顔は、祖父の笑顔によく似ていた。
了
最初のコメントを投稿しよう!