墓参り

8/8
前へ
/8ページ
次へ
僕を見てくれる人が現れるなんて、あの時は思ってもみなかった。 彼のことでさえ、ただの同情からくれる優しさなんだと思っていた。 あなたを、お祖父ちゃんと呼んでもいいですか? あなたの孫でいていいですか? 僕は東馬さんの兄になってもいいですか? 答えが返ってくることのない問いを胸に、彼のお墓を振り返る。 『当たり前だよ、春彦』 耳の奥で彼の……祖父の声が聞こえた気がした。 「まさか二十歳にもなって弟ができるとは思いませんでした」 「……! ふふ、おれもです」 垂れた目をさらに垂れさせて笑う東馬さんの笑顔は、祖父の笑顔によく似ていた。 了
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加