墓参り

6/8
前へ
/8ページ
次へ
「そんなの……ただの同情で……」 その場に膝をつく。 「そんなことありません。祖父と長く一緒にいたんでしょう? だったらあなただって分かっていたはずです」 駆け寄ってきてくれた東馬さんが僕の肩にそっと触れた。 「……僕と彼は……血の繋がらない赤の他人、だから……」 顔を覆って俯く。 「祖父はそれを理由にして人を愛さない人じゃないです」 東馬さんの手が僕の手に触れた。 「僕は……いらない、から……」 「そんなことありません!」 東馬さんが強引に僕の手をはがし、顔を上げさせた。 やっと視線が合った東馬さんの目は彼に似て垂れ目で、優しい眼差しが彼を思わせた。 力強い否定の言葉を発した東馬さんは、僕の手を掴んでいた手を離した。その手が頬に伸びてくる。 「やっと会えた。ずっと会いたかったんです。ずっと話したかった。僕には兄がいるんだと祖父から聞かされてきたんです。あなたの話をたくさん聞きました。あなたにおれの話をしなかったことを後悔していました。おれはずっとあなたに、おれの兄さんに会いたかった。話をしてみたかった」 東馬さんの真っ直ぐな眼差しと言葉が胸に刺さる。 拭えない涙が東馬さんの手にまで伝った。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加