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「そんなの……ただの同情で……」
その場に膝をつく。
「そんなことありません。祖父と長く一緒にいたんでしょう? だったらあなただって分かっていたはずです」
駆け寄ってきてくれた東馬さんが僕の肩にそっと触れた。
「……僕と彼は……血の繋がらない赤の他人、だから……」
顔を覆って俯く。
「祖父はそれを理由にして人を愛さない人じゃないです」
東馬さんの手が僕の手に触れた。
「僕は……いらない、から……」
「そんなことありません!」
東馬さんが強引に僕の手をはがし、顔を上げさせた。
やっと視線が合った東馬さんの目は彼に似て垂れ目で、優しい眼差しが彼を思わせた。
力強い否定の言葉を発した東馬さんは、僕の手を掴んでいた手を離した。その手が頬に伸びてくる。
「やっと会えた。ずっと会いたかったんです。ずっと話したかった。僕には兄がいるんだと祖父から聞かされてきたんです。あなたの話をたくさん聞きました。あなたにおれの話をしなかったことを後悔していました。おれはずっとあなたに、おれの兄さんに会いたかった。話をしてみたかった」
東馬さんの真っ直ぐな眼差しと言葉が胸に刺さる。
拭えない涙が東馬さんの手にまで伝った。
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