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「……そんなの……」
「いいんですよ! あなたが祖父をお祖父ちゃんと呼んだって! いいんですよ!」
会ったばかりの人なのに、どうしてこんなにも懐かしさを感じるのだろうか。
どうしてこの人は、僕にそんな言葉をくれるのだろうか。
「あなは祖父をお祖父ちゃんとは決して呼ばなかった。父とも言わなかった。それはあなたの過去が関係していると思うと祖父は言ってました。祖父が寂しそうなのは見ていて分かりました。おれはその過去は聞いてません。それは本人の口から聞くものだと言われましたし、おれもそう思ったので。……でも、おれは、祖父からあなたの話を聞いて、あなたを兄だと思っていました」
よしてよ。僕は、君に兄と呼ばれる筋合いのない人間なんだから。
だから、やめて。
もう何も言わないで欲しい。
そう思って耳を塞ごうとしても、東馬さんが許してくれなかった。
「あなたに他に家族がいないのなら、おれと家族になってくれませんか? おれの兄になってくれませんか?」
「会ったばかりの人に、何言って……」
「言ったでしょう。おれはあなたの話をたくさん聞いたんです。同じ祖父から。それともあなたは迷惑ですか?」
迷惑だなんて、そんなこと……言えるわけないだろ。
僕は彼に救われたんだから。
僕は何も言えずただただ首を横に振った。
東馬さんのほっとしたような息遣いが聞こえた。
「一緒に住もうと言ってるわけじゃないです。そうできたら嬉しいですけど。でも、許してくれるなら、あなたともっと話がしたいです。あなたからも、祖父のことを聞きたいです。……兄さんと、呼びたいです」
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