魔法使い

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魔法使い

間髪入れず、魔弾がこちらに飛んできた。 当たりはしなかったが、床に立派なクレーターが出来た。 「…おっと、危なかった」 アレイは俺の無事を確認すると、空中を見上げた。 宙に浮かぶ魔法使いが、杖から微かに煙を立ち上らせていた。 その目は虚ろなものになっている。 「メーレイ…さん…」 そう言えば、あいつメーレイって名前だっけ。 だが、もはやあれは人々を救うために立ち上がった勇者の仲間ではない。 かつてはそうであったとしても、今はゼガラルに操られる生きた屍だ。 魔法使いは、杖をかざして青い五芒星を作り出すと、大量の氷塊を降らせてきた。 俺はまともに触れるとそこそこダメージを受けるし、避けるのにも少し苦労したが、アレイはそこまででもない様子だった。 やはり、氷属性だからか。 すると、今度は赤い五芒星を生成して地面から火を噴き出してきた。 これはさすがにアレイも当たるとまずいらしく、ジャンプして躱していた。 そして、アレイはそのまま空中で、魔法使い目掛けて矢を放った。 しかし、魔法陣を貫通する事は出来ず、弾かれて地面に落ちた。 さらに、カウンターで帯状にした火を食らってしまった。 「っ…!」 「アレイ…!」 「大丈夫です…この…くらい…」 と、魔法使いが再び魔弾を放ってきた。 アレイはなんとか避けたが、キツそうな顔をしていた。 彼女にこのまま戦闘を続けさせるのは少々酷だ。 どうにか早めに終わらせないと… と思った矢先、 「[恵みの水]…!」 アレイは術を唱えて青い水滴を空中に呼び出し、それを自身にふりかけた。 すると、アレイの傷がたちまち回復した。 なるほど、回復の術だったのか。 水属性…いや、もしかして海人特有の術である「海術」か? だとしたら、ちょっと驚きだ。 海術は話には聞いた事があったが、見るのは初めてだ。 「…!」 アレイはさっきとは別の魔導書を出した。 それを見て、向こうも魔導書を構えた。 先に撃ったのは向こうだ。 詠唱はなかったが、砂嵐が飛んできたので、恐らくは地の中級魔法である「デューン」だろう。 それに対してアレイは「ウェーブ」、水の中級魔法で応戦した。 砂嵐に水がぶつかると、当然ながら砂に吸収される。 そして、砂嵐はパッと消え去り、泥のようなものだけが残った。 すると、魔法使いは杖をかざして魔力を放ち、砂を手のような形にしてアレイ目掛けて伸ばしてきた。 「[スレイブレイト]!」 アレイは魔弾を放って砂の手をかき消しつつ、魔法使いに攻撃する。 やはり、奴はすぐに防御魔法陣を張って防いだが、アレイは続けて技を放った。 「弓技 [ブレイクスリンガー]!」 矢とは思えないほど太く、重い矢を撃ち出し、見事に魔法陣を破壊した。 呆気にとられる魔法使いに、アレイは一気に畳み掛ける。 「[スコーピオンアロー]!」 飛びかかりつつ、空中で高速の矢を放って地面に釘付けにした魔法使いに、一際強力な魔弾をぶつけた。 魔法使いは、俄に血を吐いて力尽きた。
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