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僧侶
次は僧侶が向かってきた。
と言っても、恐らく中級相当であろう光魔法を遠距離から使ってきたのだが。
俺は魔法をなんなく躱した。
アレイが矢を撃って反撃してくれたが、正直あまり効いてないだろう。
僧侶…というか魔法系異人は耐久力には劣るが、その分強力な装備をつけてたり、身を守る防護魔法を使ってたりしてる事が多い。
実際、今回の僧侶も肩に矢を受けても然程キツそうにはしていなかった。
そして、僧侶は杖を掲げて再び光魔法を使ってきた。
さっきのは複数の光を瞬かせるという演出だったが、今度のは太い光の帯が頭上から飛んできた。
その演出からも、相応の威力がある事がわかる。
魔法を躱しつつ、刀を振るって斬撃を飛ばす。
向こうの胸を切り裂けたが、僧侶は構わず魔法を使ってきた。
それは、赤黒い霧のようなものを複数召喚し、こっちに飛ばしてくるというものだった―
「おっと!」
アレイ共々結界を張って防ぐ。
今のは「ソウルセア」という即死魔法で、食らうともれなく命を奪われるからだ。
「即死魔法を使うなんて…」
「さすがは僧侶だな」
僧侶は修道士の一つ上の種族。
そして修道士は光魔法を専門に使う種族であり、回復や援助の魔法にも長けている。
そんな種族が即死魔法を使う、と聞くと驚く者もいるかもしれないが、なぜか奴らは即死魔法を使う事ができる。
本来即死魔法は闇に属するものだが、光の即死魔法もあり、奴らはこれを使っている。
それは一体なぜなのか。
そもそもなぜ光魔法に即死魔法があるのか。
それはわからない。
「…!」
アレイが何かを察したようだ。
…と、その直後、僧侶の背後に何やら強大なパワーの塊が現れた。
それは真っ白く、獣の顔をした巨人のような姿をしていた。
驚き、一瞬硬直したが、すぐに我に返った。
その白い巨人は、こちらに手を伸ばしてきた。
闇の魔導書で対抗しようと思ったが、その前にアレイが術を放った。
相手を凍らせる術ぽかったが、巨人は完全に凍りつきはしなかった。
ただし、体の一部分に氷がついて、動きが鈍くなった。
おかげで、楽に掴みから逃れられた。
その上で、魔導書を開いて再びネクロスを使う。
巨人は一度消えたが、すぐに再生した。
「なんだ…!?」
「わかりませんが…恐らくは、奥義かと!」
「なっ…!?」
通常、アンデッドになって間もない屍はあまり自由が効かず、体を上手く動かせなかったり、魔法を使えなかったりする。
また多くの場合は話す事も出来ないし、連携を取ったり奥義を使ったりも出来ない。
だが、こいつは違った。
どうやら、元々結構優秀な僧侶だったようだ。
生前、優れた魔力や戦闘力を有していた異人は、アンデッドになりたてでも高い能力を持っている事がある。
それは単に戦闘力が高いというだけではなく、優れた知能や魔力を持っていたり、言葉を話せたりする。
こいつはどこまで生前の能力が残っているのだろうか。
話ができるかどうかまではわからないが…少なくとも、奥義を使えたという事は、それなりには生前の能力が残っているように思える。
さて、巨人は次はアレイを狙ってきた。
拳を握り、アレイ目掛けて振り下ろす。
アレイは結界を張って防いだが、力に押されて結界が割れそうになっていく。
そこで、俺は術を放つ。
ただし、巨人ではなく、それを操っている奴に。
「雷法 [サンダースパイン]」
威力より、痺れさせることによる牽制を重視した術。
それで向こうの動きを止めると、巨人も動きを止める。
「今だアレイ!」
「!はい!」
アレイは弓に矢をつがえ、僧侶目掛けて撃ち出す。
矢は僧侶の頭を刺し貫き、僧侶はしばし立ちすくんだ後に倒れた。
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