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地鬼の館·深層
門を越えると、そこそこ長い直線の通路が現れた。
奥へ案内するかのようにアーチが連続しており、アーケードのようになっていた。
その奥には再び門があったが、これは普通に開いた。
そして、階段を降りた…
「ここは…」
降りた先の様子を見て、アレイが呟いた。
洞窟を改良して作った場所のようだが、壁は一面が黒く塗られ、壁のところどころに白い火が灯った豪華なランプがある。
そして、床は高級感のある艶やかな紫の石材になっている。
先ほどまでの荒廃した古い屋敷、という感じとはうって変わり、そこそこの費用をかけて洞窟を改良した施設という感じになった。
いよいよ来た、王典の本拠地。
「ここからが本番だな」
「そうですね」
とりあえず、最初の扉を開く。
地下洞窟故か薄暗く、視界がよくない…と言いたい所だが、壁に飾られたランプが異様に明るいからかそうでもない。
通路に関しても、ロトゥンがそれなりにいたにせよ面倒なギミックなどはなく、シンプルな道が続いた。
ただ、分岐点はちょっと厄介だった。
「分かれ道か…どっちにいく?」
「そうですね…私は左に行くので、龍神さんは真っ直ぐ進んで下さい。
それで、しばらく行ったら戻ってきましょう」
「そう来たか…まあいい、わかった」
という訳で脇道に逸れずに進んだ。
その先にあったやたら重い扉を押し開けると…
「ありゃ」
真っ暗な部屋だった。
しかし、何かの気配を感じる…
「…?」
とりあえず暗闇を凝視していると…
突然闇から何かが現れ、襲いかかってきた。
それはメーヴ…盗賊のアンデッドだった。
咄嗟(とっさ)の判断で口に短剣を突き刺すと、あっさり倒せた。
まあ、所詮は人間の盗賊がアンデッド化したものに過ぎないって訳だ。
…と油断してると、奥からザネビが現れる。
これは感電させて動きを止め、その間にぶった斬って倒した。
灯りを灯すと、何もない狭い部屋に過ぎなかった。
「こんな狭い部屋一つにアンデッド二体か…」
とまあこのように、単純だが厄介なトラップがあるのだ。
アレイのほうは大丈夫だろうか…
◇
龍神さんと一旦別れて暫く進んだら、変な石像が一定間隔で並べられた通路に出た。
その石像は…何だろう、不気味ではあるけど、どこか美しさも感じられるものだった。
背中に二枚の翼を持ち、角を生やした、人間に近い形をした怪物…のようだけど、こんなの見たことない。一体何を象ったものなんだろう?
異形やアンデッドの一種だろうか。
シャッターみたいなものが降りている所を見つけた。
上げれば通れそうだけど、一人では上げれないので、一旦戻ることにした。
さっきの分岐点に戻ると、丁度龍神さんも戻ってきた所だった。
「あ、龍神さん。どうでした?」
「いや、何もなかったよ。雑魚がいただけだ」
「そうですか…
シャッターみたいなものを見つけたんですが、私一人じゃ上げられないんです。
手伝ってください」
「わかった」
二人でやったら、あっさり開けられた。
その先にはさらに下へ続く階段と、低く浮かぶ大きな紫色の水晶があった。
彼は階段を降りていこうとしていたけど、私はそれを止めた。
「そっちじゃないです」
「え?」
「この水晶…お気づきになりませんか?」
「…あ、そうか」
「そういうことです」
これはたぶん、ただの水晶じゃない。
私は龍神さんの手を取り、水晶に触れた。
「おお…」
思った通りだ。
ユキさんが作り出すものと同じ…転移の結晶。
触れたものを、同じ結晶がある別の場所へワープさせる。
そして、今ワープしてきた、この小部屋の先は…。
奥へ進むと、暗い空間に出た。
床に描かれた特殊な魔法陣は弱々しく光っている。
そしてその中央には、かすかに光を放つ小ぶりのハンマーがあった。
あれが祀具の槌か…
「ここで間違いないな。あれを壊すぞ」
龍神さんが、そう言って魔法陣を踏んだ瞬間…
重々しく、恐ろしい声が聞こえた。
「誰だ…ん?そうか、そうか…」
同時に、ハンマーが眩しいほど強い光を放つ。
そして…
「わざわざ出向いてくれるとはご苦労な事だ…。
して、どこまで遊ばせてくれるのかな?」
声の主…かつて猛る地維と呼ばれた再生者が、姿を表した。
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