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実際、トガニとヨニが軍舎に入ると厳粛な空気がそこかしこに漂っていた。ミーティングルームは朝早くから使用されている。ここに康介が呼び出されたことは明らかである。
「勝手なことを言わないでよ」
トガニが自分の部屋に入ろうとしたところで、隣の康介たちの部屋から大きな声が聞こえた。ドアが開いていて覗いてみると、ミノがチャンヒョクの前に仁王立ちしている。
二段ベッドのほうを見上げると、ユンソルはいない。トガニに気づいたチャンヒョクの顔つきが変わった。助かったように安堵の顔になる。
「なーに、言い合いしてんだ。」
トガニが聞くと、怒り肩のミノが険しい顔のまま振り向いた。
「聞いてよ!
チャンヒョクが康介を連れて、
日本に行こうとしているんだ。」
「………日本…」
拍子抜けして、トガニは目を丸くした。チャンヒョクはバツが悪そうに口をとがらせる。
「まあ…何も…康介のいないところで、第三者同士で決着をつけるのはどうなんだよ。」
苦しいが、そういった文言がやっとだった。二人はしばらく睨み合っていたが、ミノのほうが折れた。
「それもそうだね。」
「康介は?」
「ずっと面談。
意味ないってのに…」
不貞腐れたように、チャンヒョクが吐き捨てた。
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