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食料庫に貯蔵してあった野菜等は、立派なものだった。
魚や肉も、釣り立てや捌き立ての物があって新鮮だし、ハーブの種類も豊富。
調味料の酒や塩等も手に入れ、バージルはそれ等を持って家に戻った。
「材料貰ってきた。飯作るぞ」
調理台の上に材料が入った籠を置くと、好奇心強そうなアルカードが近付いてきた。
「ここの食料庫、野菜もいっぱいあったし、カラムからはパンまで貰った」
籠からは小麦色の丸パンが顔を出している。
材料を見たアルカードは、関心しながらシャツの袖を腕捲りした。
「畑はあったが、見事じゃな。儂も手伝う」
「おう。じゃあシャノンは芋の皮剥いてくれ」
さっきまでは話し掛けるにも躊躇があった。
でも今は、カラムと心の距離が少し縮まった気がしていて、機嫌も良い。
これからは三人で家事をやらなければならないから、シャノンに対する特別待遇等はない。
バージルはお湯を沸かしてスープを作る準備をし、アルカードは肉を細かく切っていた。
二人共、長くキッチンに居た経験で、やるべき事は全て頭に入っている。てきぱきと、そつなく料理を進めていった。
少し時間が経ってから、バージルはシャノンの仕事ぶりが気になった。
静かに黙々と仕事をこなすシャノンの手元を見下ろし、たまげた。
「えっ、おい! 剥き過ぎだって!」
「……そうなのか?」
シャノンの手元にある芋は、随分と小さくなっていた。
一個の芋が、切る必要のない一口サイズに。
ボウルに入った芋が全部そのくらいの大きさだ。軌道修正するにも手遅れだった。
気が抜けしてしまったが、やってしまったものは仕方がない。
「皮は薄く剥けばもういいから。次は包丁で野菜切ってくれ」
籠に入った野菜を差し出すと、シャノンはまな板の上に野菜を置いた。
まじまじとそれを見ながら、覚束ない手付きで野菜をぶつ切りにしていく。
大きさはバラバラ。一口分がでかく、一回で口に入れるのは難しそうだった。
「ちょっとでかいな……火の通り悪そうだからもう少し薄くしろ」
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