三人で初めての

2/5
前へ
/114ページ
次へ
 食料庫に貯蔵してあった野菜等は、立派なものだった。  魚や肉も、釣り立てや捌き立ての物があって新鮮だし、ハーブの種類も豊富。  調味料の酒や塩等も手に入れ、バージルはそれ等を持って家に戻った。 「材料貰ってきた。飯作るぞ」  調理台の上に材料が入った籠を置くと、好奇心強そうなアルカードが近付いてきた。 「ここの食料庫、野菜もいっぱいあったし、カラムからはパンまで貰った」  籠からは小麦色の丸パンが顔を出している。  材料を見たアルカードは、関心しながらシャツの袖を腕捲りした。 「畑はあったが、見事じゃな。儂も手伝う」 「おう。じゃあシャノンは芋の皮剥いてくれ」  さっきまでは話し掛けるにも躊躇があった。  でも今は、カラムと心の距離が少し縮まった気がしていて、機嫌も良い。  これからは三人で家事をやらなければならないから、シャノンに対する特別待遇等はない。  バージルはお湯を沸かしてスープを作る準備をし、アルカードは肉を細かく切っていた。  二人共、長くキッチンに居た経験で、やるべき事は全て頭に入っている。てきぱきと、そつなく料理を進めていった。  少し時間が経ってから、バージルはシャノンの仕事ぶりが気になった。  静かに黙々と仕事をこなすシャノンの手元を見下ろし、たまげた。 「えっ、おい! 剥き過ぎだって!」 「……そうなのか?」  シャノンの手元にある芋は、随分と小さくなっていた。  一個の芋が、切る必要のない一口サイズに。  ボウルに入った芋が全部そのくらいの大きさだ。軌道修正するにも手遅れだった。  気が抜けしてしまったが、やってしまったものは仕方がない。 「皮は薄く剥けばもういいから。次は包丁で野菜切ってくれ」  籠に入った野菜を差し出すと、シャノンはまな板の上に野菜を置いた。  まじまじとそれを見ながら、覚束ない手付きで野菜をぶつ切りにしていく。  大きさはバラバラ。一口分がでかく、一回で口に入れるのは難しそうだった。 「ちょっとでかいな……火の通り悪そうだからもう少し薄くしろ」
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加