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気絶する様に寝て、気付いたら家に運ばれていた。説明するには格好が悪過ぎる。
そんなつまらない理由で話をかわしたバージルに、アルカードは茶々を入れた。
「ふふっ、誤魔化したな」
「うるせぇ!」
バージルの怒声でその話は一旦終了。
しかし、シャノンはまだ怪しむ様な目をしていて、バージルは気付かない振りをし続けた。
数十分後。シャノンの料理未経験が露呈したり、別件で脇道に逸れたりしたが、料理は完成した。
牛肉が入った野菜スープに、アルカードが焼いた魚のソテー。それと、カラムから貰ったパン。
家に住み始めた最初の食事にしては、豪華なものだった。
「なんとか出来たな。食うか」
見映えする食事に満足して、バージルはスプーンを手に取った。
スープから味わい、その後はパンを一口。
久しぶりの落ち着いた食事は、心も腹も十分に満たしてくれた。
しかし、自分の食が進む中、向かい側に座るシャノンの食事姿が目に付いた。
ちぎりながら一口ずつ上品にパンを食べていたが、一向にスープへ手を付けようとしない。
それが不思議で仕方がなかった。
「お前、スープ食わねぇのか?」
聞いても、無表情で無言。スープを見詰めるが、やはり手を付けようとはしなかった。
さっきの事を根に持っているのかと思い、バージルは仕返しなのかと疑った。
「……ほとんど俺が作ったから嫌だとか言うんじゃねぇだろうな?」
「違う」
即答だったから、本当に違うんだろうと感じた。
他に有り得そうな事を口に出してみる。
「じゃあ嫌いな物でも入ってたのか?」
「いや……」
どうも煮え切らない答えばかりで、バージルは首を傾げるしかなかった。
すると、魚をナイフで切り分けていたアルカードが、クスクスと笑いながら教えてくれた。
「バージル、シャノンは猫舌じゃ」
「は?」
考えもしなかった答えで、目が点になった。
「寄宿舎に居た時は、シャノンの分だけマルテルが事前に冷ましておいてたからのう。誰も気付きはせんかったが、シャノンは熱い食べ物が苦手なんじゃ」
「なっ、えっ、お前っ……!」
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