幻将

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ガッ!  ガガガガガッ!! 激しい音が再戦開始の合図になった。 白い姿を切り裂くはずだった宵闇の線が、全て何かに弾かれる。 (なんだ?一本も届いてねぇ!) 弾かれた辺りには僅かに白い半透明のかけらが散っていた。 嫌な予感に従って横に飛ぶと、後れ髪が数本何も無い所で千切れ舞う。 「おわっ!?」 更に場所を移し続けると、ガラスが割れる様な音が付いて来た。 (これがフィレットの言ってたやつか) なら・・ 逃げまわりながらリークに近づいていく。 動く早さは少し相手が早い程度。 今追いかけて来ている鬱陶しい不可視の攻撃も、周囲に張り巡らせた線で何とか位置を把握できる。 (これは多分範囲効果の飛び道具みたいなもんだ・・ だったら近すぎると使えねぇはず!) そのまま移動し、体の周囲に線を展開して防御を堅めつつ距離を詰めていく。 見えた相手の表情は、驚愕。しかしそれは一瞬で険しい顔へと戻った。 「なめるなぁっ!」 ギイッ!! 軋む音と共に白と黒、二つの影が交差する。 リークの方は数本白銀の髪が舞い、頬に短く赤い線が走った。 だが、それだけ。 「本気で勝てると思っていたのか?愚か者」 「・・・・っ」 宵闇は応える事ができなかった。 骨近くまで抉れた肩と腿から流れる血が、ボタボタと音を立てて足元に血だまりを作る。 「・・くそ・・!」 断言するが甘く見た訳じゃない。 一撃を狙って近づくと同時に、何かされても大丈夫なようにしていた。 宵闇の線は攻守両用。 元々自らの精神力と体力から形作っている、言わば常時固形化した魔術のようなものであり、一本だけでも並の刃物なら弾けるぐらいの丈夫さを持っている。 何重にも重ねて身を守れば、剣撃にも魔術にも相当の防御力を持つはずが、気付いた時には大怪我を負わされていたのだ。 「・・っう・・!」 下がろうとするが思った以上に足に力が入らない。 「流石あの男が使おうとしただけはある。 だがそれ故に厄介だ。 恨んでくれて構わない」 息を荒くして睨む宵闇に、リークがゆっくりと、血の付いていない刃を向けた。
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