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「・・っ!!」
肩の激痛に宵闇は声にならない悲鳴を上げて飛び起きた。
起きた瞬間再び左肩と右腿に痛みが走る。
「~~~」
身体を震わせてこらえる宵闇の傷を後ろから何者かがつついた。
「いっで!!誰だ!」
「オ・レ」
ひどく聞き覚えのある声に宵闇は目を剥く。
振り向くとラグが人差し指をぴこぴこと動かしながら、目の前でしゃがんでいた。
「お前何で・・っ」
記憶が正しいなら、幻将に向かって行って返り討ちにされて酷く痛手を追ってーー・・・
肩と足を見ると手当てしてあり、周りを見渡すと地下だろうか、黒っぽい石壁に囲まれた少し広い部屋にいることが解った。
「何でって、お前追いかけて来たに決まってんだろ?」
呆れ顔でラグは言い、石室の入り口らしい所から近寄って来る誰かに手を振る。
「起きたか」
その誰かは平坦な口調で確認し、手に持っていた身体の半分ほどもある巨大な石板を床に下ろす。
「その怪我で半日で目を覚ますとは大したものだ」
流れる白銀髪。色白の整った顔。翡翠の瞳。
「てめえは?!」
宵闇に大怪我を負わせた張本人がそこにいた。
即座に頭の中に警告が走る。
動く方の手から大量の線を出してリークに向けようとする宵闇をラグがあわてて制した。
「落ち着けって宵闇!今度こそ殺されるぞ!
それにお前を手当てしたのはこの人だ!」
「は?けどこいつ・・・」
「お前にこんな真似したのはオレだって許したくねーがな。オレ一人じゃまともに治癒も出来なかったんだ。
とりあえず今はそれ出すな」
「・・・・・・」
訳の判らないことだらけだが、友人の真剣な説得に難しい顔をしながらもとりあえず黒線を消す。
腰の剣に手をかけていたリークもその手を下ろした。
はーー
無言で睨み合う宵闇とリークの間で深い息を吐いて、紺髪の青年は近くにあった袋から保存食らしき肉の固まりを取り出した。
「まずは腹ごしらえしようぜ?腹減るとどうしても短気になるからな」
「恨み事の言い合いはそれからだ」と背中ごしに振り返って苦笑した。
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