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―フェルグランド南西部の街ベリヴィエ―
大きな屋敷の一部屋で、老齢の男は舌打ちした。
「使えん人形どもめ。
みすみすあの小僧を遺跡に入らせるとは!」
苛立った様子で座っていた椅子の肘を拳で叩く。
「いかがされますか?」
傍に控えていた部下らしい人影が問い掛けた。
「奴とていつまでもあの中に籠もる訳にはいくまい・・封印を解くか、出てきた時を狙う。
もっと材料を連れてこい!」
虚空を睨み付けながら言い放った老人の手の中で、金属片の様なものが鈍く輝いていた。
(ロスト・フラグメント?)
「知らねぇよそんなモン」
白い青年の問いに、宵闇は即答した。
「では質問を変えよう。
お前のその武器、何か変わったものを手に入れた後から使えるようにならなかったか?」
更に尋ねてくるリークに、怪訝な顔をしつつ返す。
「多分それはねぇな。これは錬気固化って黒翼種の特技みたいなもんだ。
俺の型はガキの頃からこの黒線で変化もねぇし」
「・・・・」
翡翠の瞳が、何かを考えるように閉じられる。
しばしの沈黙。
「全っ然話が読めねーんだが、はっきり言ってくれねーか?」
ラグが話の先を急かすと、瞳と口が同時に開かれた。
「今の、一般の書物に記されている創世より前。
長く続いた戦を鎮めるために誰かが作ったらしい特殊な道具がある」
言いながら鞘に収まったままの剣を目の前まで持ってくる。
「ロスト・フラグメントと呼んでいる『それ』に当たるのが、私の持つこの剣。
そして宵闇、お前も持っているはずのものだ」
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